今回は京都木津川氏加茂町にある二つの古刹を紹介します。
加茂町は京都の南端、奈良県との県境に所在します。行政的には京都ですが、地理的には奈良という感じです。公共交通機関でのアクセスは厳しく、JR加茂駅(奈良駅から15分)から、一時間に一本のバスを利用します。
この一帯は奈良に近いことから、古くから南都仏教文化が栄えた地域とのことです。平安時代から多くの仏僧が修行に集まり、今回紹介する岩船寺と浄瑠璃寺を結ぶ緩やかな山道には、多くの石仏が点在します。
JR加茂駅から小柄なコミュニティバスに揺られること約15分、バス停岩船寺前に到着です。程なく山門が見えてきます。
岩船寺は比較的小さなお寺ですが、その歴史はとても古く、8世紀前半聖武天皇の願いで建立されたと伝えられます。本尊は阿弥陀如来像で10世紀を代表する仏像、三重塔は15世紀半ば建立、重要文化財に指定されています。
「花の寺」とも呼ばれる岩船寺、この日はシャクナゲが見頃でした。
岩船寺のコンパクトさは、他の寺院にはない魅力を作り出しています。
まず三重塔。こんなに間近に、そして見下ろすことのできる三重塔はなかなかありません。
小ぶりな本堂の中には、重要文化財の阿弥陀如来像が鎮座します。撮影当日は特別拝観が催され、本堂の中に入ることができました!
阿弥陀如来像は3メートル程度の堂々とした仏像で、小さな本堂のなか、手を伸ばせは触れることのできる距離でご挨拶することができます。本尊のまわりには四天王像、迫力一杯です。大型の寺院ではなかなか経験できない距離感でした。
(↑)「阿宇池」から臨む本堂。この中にご本尊が鎮座されています。
(↑)「阿宇池」から臨む三重塔。新緑が美しい。
岩船寺を出て徒歩30分で浄瑠璃寺です。ほぼ下りの、快適なハイキングコースにもなっています。近鉄が「テクテクマップ」の中にとてもわかりやすい地図を掲載してくれています。
浄瑠璃寺の参道に到着です。周辺には数は少ないですが、お土産屋さんと食堂があります。
浄瑠璃寺は、薬師仏とそれをまつる三重塔、阿弥陀仏九体とその本堂、宝池を中心とした庭園が平安時代のまま揃っている唯一の寺です。
浄瑠璃寺は東の薬師仏をまつる三重塔、中央宝池、西の九体阿弥陀堂から成りたっている。
寺名は創建時のご本尊、薬師仏の浄土である浄瑠璃世界からつけられた。
薬師仏は東方浄土の教主で、現実の苦悩を救い、目標の西方浄土へ送り出す遣送仏である。
阿弥陀仏は西方未来の理想郷である楽土へ迎えれくれる来迎仏である。
薬師に遣送されて出発し、この現世へ出て正しい生き方を教えてくれた釈迦仏の教えに従い、煩悩の河を超えて彼岸にある未来をめざし精進する。
そうすれば、やがて阿弥陀仏に迎えられて西方浄土へ至ることができる。
この寺ではまず東の薬師仏に苦悩の救済を願い、その前でふり返って池越しに彼岸の阿弥陀仏に来迎を願うのが本来の礼拝である。
以上、浄瑠璃寺パンフレットから抜粋です。
三重塔から本堂を臨みます。横長の本堂には九体阿弥陀仏が鎮座されています。九体がそのまま残っているのは浄瑠璃寺だけとのことです。(↓写真はパンフレットよりコピー)
国宝の三重塔の中には薬師如来像が安置されています。
浄土式庭園です。シンプルですが平穏な美しさを醸し出します。静かな時間が流れます。
今回訪れた二つの古刹は時間がとまったような世界でした。京都市内とはまた違った味わいです。是非訪れてみてください。