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今回は、バラッド演奏を中心としたピアノ・トリオの名盤3枚を紹介します。

まずはTommy Flanagan。前回紹介したアルバム "Introducing Kenny Burrell" でサイドピアノを務めていました。"Weaver Of Dreams" でのしっとりとしたソロは絶品です。これから紹介する "MoodsVille 9” は全曲あの雰囲気の演奏が詰まっています。

"MoodsVille" by Tommy Flanagan 1960

Piano: Tommy Flanagan
Bass: Tommy Potter
Drums: Roy Haynes

1.In the Blue of the Evening
2.You Go to My Head

3.Velvet Moon
4.Come Sunday
5.Born to Be Blue
6.Jes' Fine
7.In a Sentimental Mood

Tommy Flanaganは1950年代からモダン・ジャズの中心で活躍したピアニストです。名脇役として、例えばSonny Rollins ”Saxophone Colossus”など超有名アルバムに幾多と参加しています。
また「歌モノ」の伴奏者としても重用され、60年代後半から70年代にかけてエラ・フィッツジェラルドの共演者として活躍しました。

(↓ジャズの定番 Saxophone Colossus)


Saxophone Colossus

「名脇役」Flanaganがリーダーの本アルバムは、全ての曲がしっとりと優美に演奏され、自己主張の少ない柔らかな印象で統一されています。
Flanaganのソロはテクニックをひけらかすのではなく、それこそ「歌モノ」で入れるピアノ間奏のように控えめ。結果として、とても聴きやすいアルバムとなりました。

バラッドといっても、良くあるムーディーで妖艶なものとは全く異なる演奏です。
ふと見つけた昔の写真に感じるような、淡く懐かしい味わいのあるアルバムです。「望遠鏡を逆さに覗いた」既視感とでもいうのでしょうか。静かな夜にぴったりの一枚です。


トミー・フラナガン・トリオ

”Nights Of Ballads And Blues" by McCoy Tyner 1963

Piano: McCoy Tyner
Bass: Steve Davis
Drums: Lex Humphries

1.Satin Doll
2.We'll Be Together Again
3.Round Midnight
4.For Heaven's Sake
5.Star Eyes
6.Blue Monk
7.Groove Waltz
8.Days of Wine and Roses

John Coltraneグループのピアニストとして注目を浴び始めた頃の作品。"Satin Doll"  "Round Midnight"  "Blue Monk" "Days Of Wine And Roses" など有名なスタンダード曲が並んでいます。

"Night of Ballad~"といっても、さすがMcCoy Tynerで、ラウンジっぽい感触はありません。未だモード奏法には至っていませんが、それを感じさせるようなフレージングです。ペンタトニック・スケールをアウトさせるあの感触、そして得意の速弾きも聴かせてくれます。

(↓コルトレーンの名演 McCoy Tynerのピアノも彼らしさ全開)

しかしこのアルバムでの演奏は通常とは異なり抑制気味、他のアルバムで見られる、左手をガンガンとぶつけるハイフィンガーもやりません。結果とても聴きやすい、題名通りの雰囲気のアルバムに仕上がっています。

お薦め曲は 1.Satin Doll    5.Star Eyes    6.Blue Monk。"Satin Doll"はミドルテンポの軽快な演奏。Lex Humphriesのドラミングがいい味を出しています。”Star Eyes"は個人的にこのアルバムのベスト。洒落ているが転調の激しいこの曲は、McCoyにぴったり。"Blue Monk"はアウトな感じが良く出ている演奏。この3曲はバラッド演奏としては個性的ですが、McCoyらしくて好みなのです。

少しお酒の入った大人のスイーツの味わいです。硬派なバラッド演奏を楽しんでください。


Nights of Ballads & Blues by MCCOY TYNER

 

"Plays Pretty" by Oscar Peterson 1952

Piano: Oscar Peterson
Bass: Ray Brown
Guitar: Irving Ashby

1.You Go to My Head
2.There's a Small Hotel
3.These Foolish Things
4.Blue Moon
5.They Can't Take That Away from Me
6.You Turned the Tables on Me
7.I Can't Get Started
8.East of the Sun (And West of the Moon)

Oscar Petersonによるドラムレス・トリオIrving Ashbyのギターが聴ける珍しいアルバムです。
Herb Ellisをギター、Ray Brownをベースに迎えた "The Oscar Peterson Trio" も有名で、多くの名演がありますが、Irving Fisherによる伴奏はコード・カッティングが中心の非常に渋いもの。アコースティックな音色で黙々とリズムを刻むところは、カウントベーシー楽団のGrant Greenみたいで素敵

(Herb Ellisをギターに迎えたトリオ)

"Plays Pretty"は一曲が殆ど3分足らずの短い演奏、アルバム全体でも30分程度の長さです。とてもラウンジーな雰囲気で、一聴Petersonとは思わないかもしれません。

実はPetersonは私にとって「注意が必要な」ピアニストです。「We Get Request」「Night Train」等の大のつく愛聴盤がある一方、アルバムによってはアドリブが冗長でどうも苦手な演奏も少なくありません。特に中期以降のライブ盤に顕著で、強すぎるタッチ、ワンパターンの速弾きが好きになれません。会場では素敵なのでしょうね。ただ家では。。。

(アルバム"Night Train"のラストを飾る名曲 Hymn To Freedom)

(アルバム "We Get Requests"の可愛い佳曲 You Look Good to Me)

この点"Play Pretty"はカクテル・ピアノの様なのですが、よく聴くとPetersonの持ち味が良く出ています。にじみ出るようなブルース感覚、超人的なテクニックをバックにさらりと弾きこなす早いパッセージ、そして美しい高音など、Petersonの美点が短い時間に凝縮されています。

「引き算の美学」と呼ばれる日本人の美的感覚がありますが、本アルバムはPetersonの実力をいろいろ引き算して、残った美しさの凝縮の様な味わいがあります。大事なことは、もともと実力があるから「引ける」ということ。抑制された音空間に未実現のフレーズを想像する楽しみ。。。どこか禅的?

難しいことをいいましたが、ラウンジーなカクテルピアノであることに変わりはありません。ただ、このカクテルは隠し味が深いですよ。お楽しみに。


オスカー・ピーターソン・プレイズ・プリティ(紙ジャケット仕様)

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