
私の大好きなピアニスト、Michel Petruccianiを紹介します。
Petruccianiは生まれながらの難病(グラス・ボーン、先天性骨形成不全症)のハンディを負い、36歳の若さで亡くなりました。駆け抜ける様な短い音楽人生のなかで、様々な名演、名曲を残しています。彼のピアノタッチは明るく、力強く、時にユーモア溢れるもので、聴くたびに元気を貰えます。また作曲家としての才能も素晴らしく、今やJazz Standardとなった名曲も複数書き残しています。本日はPetrucciani作のオリジナル曲を中心に紹介します。
Looking Up Album 『Music』(1989年)初収録
Petruccianiの代表曲です。1989年発表のAlbum 『Music』のトップを飾ります。その後彼自身、そして他の多くのアーティストからカバーされる名曲となりました。
題名通り空を見上げるような、明るく爽快感溢れる曲です。初演の『Home』ではドラムスがLenny White、ベースはAnthony Jacksonです。Petrucciani演奏のシンセサイザーによる味付けが成されているのは80年代という時代を感じますが、安っぽさを全く感じさせないのは流石です。
1991年フランスでのライブ演奏を収録したalbum 『Live』でのLooking Upも素敵です。このライブアルバムは殆ど全曲がPetruccianiのオリジナルで占められ、演奏も聴きやすくリラックスしたお薦め盤です。
September Second album 『Playground』(1991年)初収録
イントロの強いタッチのピアノが印象的なキャッチーな曲。早いパッセージのアドリブが爽快です。シンセの味付けなど、80年代の時代は感じますが、安っぽさは微塵もありません。オマー・ハキムとアンソニー・ジャクソンが刻むリズムが、ソリッドでカッコイイです。
Home album 『Playground』 (1991年)初収録
まさに家で寛いでいるような優しいメロディー、シンセサイザーの使い方がお洒落な極上のFusionサウンドです。オマーとハキムのPOP(!)なリズムが意外感があって可愛いです。
Rachid album 『Playground』(1991年)初収録
Album 『Playground』収録曲が続きます。Fuison系の上記2曲とは異なり、Rachidはピアノ・トリオのフォーマット、純ジャズに近い演奏です。明るいけれど、どこか哀愁も感じるメロディーはフランスならではの味です。
"September Second" "Home" はライブアルバム『Trio in Tokyo』での快演もお薦めです。このライブは、1997年東京南青山「ブルーノート東京」での演奏です。ドラムはSteve Gadd、ベースはAnthony Jacksonです。当時のブルーノートは改修前で、地下まで階段が続いていましたが、その階段が観客で一杯になる、伝説のステージだったようです。あのSteve Gaddのドラムが意外なほどピッタリとはまり、躍動感溢れる演奏となりました。
Pasolini album 『Estate』(1982年)初収録
Michel Petrucciani 19歳の演奏。この曲は本アルバムのドラマーAldo Romanoの筆によるものですが、Petruccianiのオリジナルと言ってよいほど彼にぴったりの曲です。冒頭のコードをガンガンと鳴らすイントロから始まり、春の草原を散歩するような明るいメロディーが軽やかに奏でられます。共演者は皆イタリア人の様ですが、なるほど地中海の光を感じさせる曲です。
この曲のカバーとしては、山中千尋さんによる素晴らしい演奏が、album『Prima Del Tramonto』(2019年発表)に収められています。このアルバムはPetrucciani没後20周年にフォーカスした作品として、他に "Looking Up”もカバーされています。「千尋節」は健在ですが、いつもよりソフトにアレンジされているような気がします。
渋谷のコンサートホールで山中千尋さんによるPasoliniを聴いたことがあります。「私の大好きなMichel Petruccianiの曲です」と彼女自身のアナウンスで曲が始まりましたが、明るい光が疾走するような、それは素晴らしい演奏でした。
Michel Petruccianiは1999年に36年の生涯を閉じました。パリのペール・ラシェーズ墓地、ショパンの墓のお隣で永眠されています。天国で一緒に演奏しているのでしょうね。