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前回Joe Passを紹介しました。今回は全く別のタイプのギタリスト、Kenny Burrellのアルバム2枚を紹介します。

”Introducing Kenny Burrell” 1959

Guitar: Kenny Burrell
Piano: Tommy Flanagan
Bass: Paul Chambers
Drums: Kenny Clarke
Congas: Candido

 

Kenny Burrellのデビューアルバム。ブルーノートの1500番台に登場です。演奏はブルース・フィーリングに溢れ、太くタメのあるギターの音色は明らかに白人ギタリストとは異なります。Burrellはアルフレッド・ライオンのお気に入りでしたが、肯ける内容です。

とてもデビュー作とは思えない洗練された演奏、同じデトロイト出身のピアニストTommy Flanaganとの相性が抜群です。Candidoというコンガ奏者がブルージーな雰囲気を強めます。

お薦めの曲は以下です;

1.This Time the Dream's on Me: 一曲目から早いテンポでCandidoのコンガが活躍します。Burrellのギターはシングルトーン中心でホーンライクなもの。デビューアルバムの始めから、既に風格を感じさせる演奏です。

2.Fugue 'N Blues: 一転してスタイリッシュな演奏、どこかMJQみたい。ピアノによるテーマ提示をギターが対位法的に後追いしていきます。まさにフーガの技法ですね。Burrellのソロはブルージーですがどこかクール。サックス等ではこの味はでませんね。ジャズギターならではの名演です。

4.Weaver Of Dreams: ビクター・ヤング作のバラッド。Burrellの演奏はこの曲の美しさを最大限に引き出しました。コードワークとシングルトーンを巧みに混ぜながらテーマを紡いでいきます。Cannonball AdderleyとJohn Coltraneでも有名な曲ですが、しっとりとした美しさではBurrellの演奏が勝っています。途中、Tommy Flanaganのソロも絶品です。Burrellからソロを引き継ぐタイミングといい、淡いピアノの音色といい、Burrellが織りなした雰囲気をしっかりサポートしています。さすがデトロイト仲間の相性でしょうか。
私はJAZZのバラッドというとこの演奏を思い出します。非の打ち所がない素晴らしさです。

(↓)Coltraneとの共演です

5.Delilah  7.Blues For Skeeter は、Burrellお得意のブルース・ナンバー。彼のブルースはどこかクールでお洒落です。ジャケットを見ればわかるようにBurrellは相当な男前。映画界からも注目されたそうです。「格好良い」自意識がそうさせるのでしょうか。


Introducing Kenny.. -Hq- [12 inch Analog]

"A Generation Ago Today" 1967

Guitar: Kenny Burrell
Piano: Richard Wyands
Vibraphone: Mike Mainieri
Sax: Phil Woods
Bass: Ron Carter
Drums: Grady Tate

 

BurrellVerveに残した1967年の名作。”Introducingとはやや異なり、クールな演奏に徹しています。私は最初聞いたとき、Burrellの演奏とは分かりませんでした。かといって他のギタリストが思い浮かぶ訳でなく、不思議な匿名感があるアルバムだと感じました。ギターのテクニックは素晴らしいのですが決して熱くならなく、。ジャズとは思えないジャケットが「匿名感」に輪をかけます。

このアルバムは、ベニー・グッドマン楽団が好んで演奏した楽曲を中心に、選曲されているそうです。あのCharlie Christianが在籍していましたね。”A Generation Ago Today” のアルバム・タイトルは、グッドマンのナンバーを現代的に演奏したという意味でしょう。ジャケットは「今風の若者」をイメージとのこと(でもあまり60年台風に見えないのは私だけ?)。

( ↓)ジャズ・ギターの元祖 Charlie Christian

Burrellのギターはコード・ワークを多用し、シングル・ノートは速弾きは抑え音色を重視した演奏。良い意味で淡白で、ポップに感じるほどスムーズです。特筆すべきはPhil Woodsのサックス。意外なほどメロディアスで「この人こういう演奏ができるんだ」と、このアルバムで見直しました。

ピアノやベースも特にソロを目立って取ることもありませんが、申し分の無い名人技で脇を固めます。全曲ソフトでスムーズ、統一感のある捨て曲無しの名盤なのは間違いありませんが、ジャケットといい、演奏といい、どこか時代を感じさせない、ぽかりと時空に浮いたような、不思議なアルバムでもあります。

 


ア・ジェネレーション・アゴー・トゥデイ

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