ジャズ演奏家による The BEATLES カバー(1)
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The Beatles、英国が産んだ奇跡の四人組は、数多くの名曲を私たちに残してくれました。その名曲はロック・ポップのアーティストはもちろん、クラッシック分野の演奏家にも数多くカバーされています。当然ジャズ演奏家によるカバーも多いですが、実はこれ!という名演は意外に少ないと感じます。

その理由は、Beatlesの曲をカバーすれば売れるだろうと、演奏家にとって「やらされ感」のある企画モノが多いからでしょう。今回は数は少ないですが、やらされ感など薄い、アーティストからの「Beatles愛」が感じられるTribute作品を紹介します。

ALL WE ARE SAYING by Bill Frisell 2011

1 Accross The Universe 5:53
2 Revolution 3:50
3 Nowhere Man 5:14
4 Imagine 4:52
5 Please, Please Me 2:06
6 You've Got To Hide Your Love Away 5:08
7 Hold On 3:56
8 In My Life 4:05
9 Come Together 5:08
10 Julia 3:31
11 Woman 4:21
12 Number 9 Dream 3:42
13 Love 2:18
14 Beautiful Boy 3:27
15 Mother 6:53
16 Give Peace A Chance 3:37

Bill Frisell (g)  Greg Leisz (g)  Jenny Scheinman (vln)   Tony Scherr (b)   Kenny Wollesen (ds)

ジャズマンによるBeatles Albumとしては、これ以上無いくらいの最高傑作だと思います。BeatlesというかJohn Lennonへのオマージュ作品です。
「これカントリーだろ?」って言わないでください!FrisellサウンドはれっきとしたJazzですから。
といっても、確かにアメリカ南部のドライブインでかかっていそうなサウンドではあります。

全ての演奏(除く16 Give Peace A Chance)で原曲のメロディーが忠実に再現されています。Frisellにしては尖った感じのない、シンプルな演奏に徹しています。例外は16 Give Peace A Chanceで、Robert Frippが演奏しそうな空間音楽となっています。この演奏でアルバムを閉めるのも意味深です。

Frisellの乾いた音色のエレクトリック・ギター(おそらくテレキャスター)がテーマを奏で、スティール・ギターとヴァイオリンがそれに絡みます。リズムは基本ミドルテンポのエイトビート。ゆったりと聞いていると不思議に優しい気持ちになります。全ての曲がお薦めですが、敢えていくつか紹介すると;

10: Julia:「White Album」に収録されたギター弾き語りの曲。原曲の雰囲気を忠実に再現しています。歌詞の一節 "morning moon" そのものの、淡い美しさが良く出ています。

11: Woman:Johnの最後のアルバムになった「Double Fatnasy」に収録、シングルカットもされました。原曲では " I Love You~" とリフレインする印象的なメロディー部分、そこのギター・アルペジオが聞きものです。

15: Mother:アルバム「Johnの魂」の一曲。イントロはギターで鐘の音(原曲では本物の教会の鐘)を模します。続いて、ゆっくり時を刻むようなドラムにのって、Frisellのギターが訥々とメロディーを奏でます。後半、Johnが "Mom don't go!" とscreamする有名なフレーズは、ディストーションギターでカッコよく決めてくれます。

聞けば聞くほど、Bill FrisellのJohn Lennonへのリスペクトが感じられる作品です。本当に自発的に作られたTribute Albumだと確信できます。


Julia by Ramsey Rewis from album "Sky Island"

Pf: Ramsey Lewis
Gt: Henry Johnson
Key: Michael Logan
Bs: Chuck Webb
Ds: Steve Cobb
Per: Tonny Carpenter
Sax: Art Porter

 

元祖フュージョン・キーボディスト、ラムゼイ・ルイスによる93年のカバー。ソフト&メローの極上サウンドに仕上がてくれました。薄く流れるオーケストラをバックにシルク・タッチのピアノが美しい。原曲の歌詞「Ocean Child Calls Me」を思い起こすような、メルヘンな演奏です。


Dear Prudence by Hiram Bullock from album ”Way Kool"

Hiram Bullock (g, vo, key)
Ricky Peterson(key, vo)
Will Lee(b, vo)
Charlie Drayton(ds, vo)
Don Alias(perc)
Dave Delhomme(key)
Steve Logan(b)
Steve Wolf(ds)

大阪生まれの フュージョン・ギタリスト、ハイラム・ブロックによる92年のカバー。原曲よりスローテンポでバラッド風に仕上げております。ストラトキャスターのディストーション・サウンド(といっても透明な音色)が気持ちよいです。並みのフュージョン・ギターとは一線を画したカッコよさはさすが。夭折が悔やまれます(合掌)。


Dear Prudence by Jeff Lorber from album ”Midnight"

Jeff Lorber(key,g)
Nathanie Phillips(b)
John Robinson(drs)
Michael Landau(g)
PAUL Pesco(g)
Buzz Feiton(g)

この方は元祖スムースジャズ・キーボディストでしょうか、Jeff Lorberによる98年のカバー。収録アルバム「Midnight」は何と日本のエイベックス・レーベルから発売!プロモビデオもあります。

ハモンド、ローズ、シンセの各種キーボードが駆使され、スムースジャズにしては癖の強いJeff Lorberの音楽が構築されています。Dear Prudenceのコード進行をあくまでも素材にしたって感じのサウンド。でも素晴らしく印象的ですよ。


書いてみて気づいたのですが、John Lennonの曲のカバーが多いですね。Paul McCartneyは完璧主義者で、曲も細部まで作りこまれた感じですが、Johnの曲はコード進行中心で基本ミニマルこの(Johnの)特徴が逆に演奏家を刺激するのかもしれません。

しかしこの二人(JohnとPaul)が一つのバンドにいたとは奇跡としか言いようがありません。

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