
Tell Me a Bed Time Story 1978
Quincy Jones: conductor, Leader
Electric Piano: Herbie Hancock
Drums: Steve Gadd
Guitar: Eric Gale
Bass: Anthony Jackson
Flute: Hubert Laws
Violin: Harry Lookofsky
Quincy Jones 1978年のヒットアルバムから “Tell Me a Bed Time Story” です。この曲はHerbie Hancockがオリジナル、アルバム” Fat Albert Rotunda” 1969 の中の一曲です。オリジナル演奏は、ボサノバ風のリズムでJoe HendersonらがSax, Trumpetなどでテーマを多重奏します。メローな雰囲気が出て、これはこれで良いのですが、Quincyのカバーは洗練されていて、原曲の素晴らしさをより引き出しています。
曲は、Patti Austinらのコーラスに導かれてHerbieがローズピアノでテーマを弾きます。続いてHubert Lawsのフルートが入り、Herbieがバッキングに廻ります。まさに「おとぎ話(bedtime story)」、実にソフトでメローな展開です。テーマが一巡したのち、Herbieのインプロヴィゼーションが始まります。Herbieのインプロは、ブルース臭さを全く感じさせない理知的で構成力溢れるものです。原テーマを崩すのではなく、テーマを構成する音符を再配置するような。さすが、マイルスからモードを学んで最もこなしたと言われるHerbieです。
(↓)Herbieの代表的名作です 新しいジャズの到来を告げました
Herbieのインプロは続きますが、何とバイオリンがユニゾンしてきます。そっくりそのまま、バイオリンが重ねるのです。これは、インプロを全て採譜し、Harry Lookofskyと言うジャズ・バイオリストが譜面をそっくり再演、それをオーバーダブ(何と15回も)したそうです。Herbieのホリゾンタルなソロがバイオリンで再現されることで、その無機質な味わいが強調されています。何とも言えない優美な演奏です。Quincyのアイディアに脱帽。逆に言うと、このアイディアが思いつくほどHerbieのインプロヴィゼーションは魅力的と言うことでしょう。
Tell Me 〜には、Quincyのみならず多くのカバーがあります。私のお勧めは日本の笠井紀美子さんによるもの。アルバム「Butterfly」1979に収録されています。このアルバムはHerbieプロデュースで大半は彼の曲で占められています。Herbieが演奏でも全面的にバックアップしており、彼自身のどのアルバムよりもフェンダーローズの演奏を楽しめます。50%Herbie、50%紀美子といったアルバムです。スティビーワンダーのカバー “As”もgood。Herbieのボコーダー(懐かしい)が紀美子のボーカルと掛け合います。アナログシンセも今聴くと新鮮!
“Sounds & Stuff Like That” にはスタッフのメンバーが参加しています。クレジットを見ると、Steve Gadd, Richard Tee, Eric Galeが名前を連ねます。Cornell DupreeとGordon Edwardsは不参加のようです。特に一曲目”Stuff Like That”はスタッフ色全開です。イントロのローズは誰が聞いてもRichard Tee。Steve Gaddにしかできないあの縦乗り。チャカ・カーンのボーカルがフィーチャーされていますが、間奏のマイケルブレッカーのアルトがまた素晴らしい!短いソロですが繰り返し聴きたくなります。アナログシンセがいい味付けをしています。本当に70年代の音楽は素晴らしい!