初夏もまもなくですね。ジャズ演奏によるボサノヴァの名盤3枚を紹介します。
"Bossa Antigua" By Paul Desmond 1964
Sax: Paul Desmond
Guitar: Jim Hall
Bass:Eugene Wright
Drums: Connie Kay
Paul Desmondによるピアノレス・カルテットの名演。Jim Hallとの共演と言って良いほどギターも存在感があります。
MJQのメンバー、Connie Kayの端正なドラミング、Eugene WrightとDesmondはDave Brubeck カルテットで同窓ですね。リズム部隊が丁寧でアルバム全体を通じた上品な雰囲気醸成に貢献しています。
Desmondのアルト・サックスの音色は唯一無二の柔らかさ。Jimのギターもまた真似のできないまろやかなトーン。二人が合わさり、淡いサウダージな雰囲気全開です。全てのトラックの曲調が似ていてアルバム全体に統一感があります。意外と少ないですよ、こういうアルバム。折角の雰囲気を壊すトラックが1、2曲入っていて、わざわざスキップさせるのがウザかったり。。。この点Bossa Antiguaは、夏の午後にCDをリピートで聞いたら最高、気持ち良くうたた寝してしまうかも。
といっても誤解しないでくださいね。このアルバムはBGMではありません。れっきとした純JAZZです。あのJim Hallですから、どうやって弾いているのかと不思議に思うコードワークを連発しています。Desmondの音数が少なく音色を重視するアドリブが素敵、Brubeckカルテットの時より自由に演奏している感じです。
本アルバムは全ての曲がお薦め、全体で一曲という感じです。
"Tudo Bem!" by Joe Pass 1978
Guitar: Joe Pass
Percussion: Paulinho Da Costa
Keyboard: Don Grusin
Bass: Octavio Bailly Jr
Drums: Claudio Slon
珍しくJoe Passがラテン音楽に挑んだアルバムです。意外感がありますが、名作に仕上がりました。パーカッションのPaulinho Da Costaがハイライトされています。
サウダージというより軽快でクールなアルバムです。Passの軽快な速弾きが心地良いです。お薦めトラックは以下です。
1 Corcovado: 冒頭からパーカッションが軽快な曲。Passのアドリブは軽妙なタッチ、得意の速弾きが楽しめます。
2 Tears: 一転してスローバラード。Passのアドリブをじっくり味わえます。Don Grushinのエレピによるバッキングが効果的。
4 Voce(You): 軽快だけど落ち着いた演奏。Passのギターが淡々とアドリブを続けます。ボサノバのアルバムはサックスやフルートが加わることが多いのですが、Tudo Bemはギター中心の構成で落ち着いて堪能できます。
5 If You Went Away: Pass十八番のソロギター。彼の超絶技巧の一端を味わうことができます。
7 The Gentle Rain: ミドルテンポの曲でのPassのアドリブは饒舌だけど煩くない。ジャズギターのお手本のような演奏です。
"Elis" by 渡辺貞夫 1988
Sax: 渡辺貞夫
Vocal and Guitar: Toquinho
Keyboards: Cesar Camargo Mariano
Guitar: Heitor Teixeira Perira
Bass: Nico Assumpção
Drums: Paulo Braga
渡辺貞夫がブラジルで現地ミュージシャンと録音。ブラジルの歌姫、Elis Reginaに捧げたミニアルバムです。アメリカのジャズ・チャートで一位を記録しています。
私個人的にもナベサダで一番好きなアルバム。日本のCMで使われた 4.Manhattan PaulistaのFusionサウンドも良いですが、伝統的なボサノバ・スタイルの 3. Elis 5.O QUE PASSOU PASSOU 6.PACIENCIA の3曲が絶品です。サックスの柔らかい響きが、ブラジルのミュージシャンと完全に溶け合って、洗練された民族音楽(?)といった趣に仕上がっています。アメリカのミュージシャンでは絶対出せない味だと思います。かといってブラジル音楽のハイテンションな感じともまた違う。やはりナベサダ・ワールドです。
3 Elis: 歌姫Elis Reginaにナベサダが捧げた曲。優しいメロディー、ナベサダの本領発揮です。途中のベース・ソロが歌心一杯で胸に沁みます。全く知らないミュージシャンですが、ブラジルのレベル高すぎです。
5 O QUE PASSOU PASSOU: 大御所Toquinhoのボーカルを聴きことができます。呟くような歌唱がナベサダのサックスとベストマッチ。二人はその後、コラボアルバム”MADE IN CORACAO “ をレコーディングしています。
6 Paciencia: 私が一番好きなトラック。とにかくバックミュージシャンが素晴らしいのです。ドラム・ベース・ギターのリズム部隊が完璧、そのリズムに乗ってナベサダが演奏を楽しんでいるのがわかります。途中、とつとつとしたエレピ・ソロもいい味出しています。何より、シンセによるストリングス&ホーンアレンジが最高!ジョビンの傑作「Wave」を思い出します。ブラジルのミュージシャン、凄すぎ!