
確定申告の季節です。今回は米国株取引にかかる税金について、特に二重課税分を取り戻す「外国税額控除」の申告方法につき、解説します。
米国株取引に関わる税金
当たり前ですが税金は利益(≒所得)に対してかかります。株式取引で得られる利益は、①配当所得 ②譲渡所得 の二種類です。
①配当所得について:
- まず、米国で10%源泉徴収されます(ドルベース)
- 源泉徴収後の金額が円貨換算され、その円貨に対し20.315%の国内税が課されます
米国+国内合計で、約28%程度の税金が引かれる訳です。このうち、外国税額分は、確定申告することによって取り戻すことが可能です。
②譲渡所得について:
- 譲渡所得の場合、米国での源泉徴収はありません
- 配当金額が円貨換算され、その円貨に対して20.315%の国内税が課されます
そもそも外国税額が発生していません(取り戻す対象がありません)。
年間配当額の確認
多くのネット証券であれば、米国株投資に関する配当実績を纏めた帳票がアウトプット可能です。以下、楽天証券の例を表示します。
何か複雑な計算をしているように見えますが、そんなことはありません。以下の順番で見てみましょう。まず、手取り額を確認しましょう。
- 保有数量(275株)に配当単価(0.7725)を乗じます→税込金額(外貨)212.44
- 米国での源泉徴収(10%)21.24を減じます→差引金額(外貨)191.20
- 為替レート(113.23)を乗じます→国内源泉税課税標準額(円貨)21,649
- 国内税率(20.315)を減じ為替レート(113.23)で除します→お受取金額(外貨)152.38
次に、取り戻す外国税額を計算します。
- 税込金額(外貨)212.44に為替レートを乗じます→国外源泉課税標準額(円貨)24,054
- 申告用国外税率(10%)を乗じます→申告用国外源泉徴収税額(円貨)2,405
確定申告を行って、この2,405円を取り戻しましょう。
外国税額控除を受けるには確定申告が必要
外国税額控除とは
そもそも外国税額控除とは、外国で二重に課税されたと認められる所得について、その外国税額分を国内で支払う(支払った)所得税から控除する(差し引きする)制度、です(*)。
(*)外国所得が配当金のみの、日本における一般の雇用者を想定しています
国内所得税額が100万円、外国税額が10万円であるとして、控除を申告して所得税を90万円(100-90)にする行為です。
もちろん何もしなくては申告はできませんよね。この申告の手続きが確定申告です。
外国税額控除限度額について
外国税額控除については、一つ留意点があります。それは、控除できる額について一定の限度がある、ということです。
それは以下の式で計算されます。
所得税の控除限度額=当該年の所得税額×(当該年の国外所得総額÷当該年の所得総額)
単純化した事例で計算してみましょう。
- 所得総額:600万円
- 所得税額:120万円
- 米国株式配当金:50万円
この事例では、控除限度額は、120 x (50÷600)≒10万円 となります。
米国での源泉徴収は10%ですので(約5万円相当)、この例では全額を取り戻すことができました。
確定申告はe-taxが便利
必要な書類は以下二つを用意してください(楽天証券を例にとりますが、ネット証券では概ね同様の書類がダウンロード可能です)。
- 外国証券に関するご案内(権利・配当など)
- 令和xx年度分特定口座年間取引報告書
1.は、配当が実施される度にダウンロード可になります。多くの米国株式は3月、6月、9月、12月ですね。保有銘柄毎、4枚が必要になるのが通常です。
2.は、文字通り年間を通じた取引履歴ですので、概ね翌年1月にダウンロード可となります。
確定申告の方法はe-taxがお薦めです。上記書類に記載の情報を、e-taxで用意される画面の必要項目に入力することで、控除限度額、控除額が自動計算されます。
e-taxも昔と比べれば、ずいぶん使い勝手が改善しています。利用方法はe-taxのHP、あるいは詳しい方によるブログでの解説などを参考にしてください。慣れてくれば、30分程度でできます。
確定申告では、外国税額控除だけでなく、生命保険料やIDECO拠出金など「取り戻す可能性がある」所得税はいくつかあります。是非トライしてみてください。
日本は社会保険料を含めると、世界で一番税負担の高い国ですよ。でも国がそれに見合うサービスを国民に提供しているとは、到底思えません。一円でも、取り返しましょう!