息子の為の金融論9 株式とか債券って
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息子の為の金融論1~8纏め

お金について、その起源と機能につき説明してきました。物々交換から始まりその不便さを飛躍的に解決する交換機能、価値を統一的に表現する尺度機能、そしてお金そのものを保有する動機となる価値保蔵機能(これは経済の好不況に影響を与える)がありました。また、ヤップ島の例を引いて、お金と信用との深い関係にも触れました。お金の起源と機能を理解することは、アベノミクスの金融緩和を理解する鍵になります。このテーマは、このブログで更なる深堀を図っていきます。

次に金利について、現在のお金と将来のお金の価値の差を基本に説明しました。「現在価値」という、金融を理解するためにとても重要な考え方にも、触れました。現在価値計算は、将来のキャッシュフロー見込みと、割引率の二つで計算されることを示しました。割引率は将来キャッシュフローのリスク(バラツキ)に応じて決定されますが、割引率の計算(導出)には投資理論の理解が必要になりますので、先に債券、株式を説明します。

(改めて)この金融論は、誤解の多い金融政策(アベノミクスの骨子)と投資理論の基本を理解してもらうことが主な目的です。順を追って説明していきます。

債券と株式の基本

会社は資金調達の為に債券と株式を発行する

債券と株式は、会社が資金調達を行うために発行します。金額に応じた数の社債券、株券を発行し、証券会社を通じて、投資家に販売します。会社はその売却代金をもって資金を集めるのです。

資金調達という目的は同じですが、債券と株式はその性質が大きく異なります

債券の場合、会社は定期的に利息を支払い、満期に全額を返さなくていけません。返済義務があるという意味で、他人資本とも言われます。

株式の場合、会社は投資家に返す義務はありません。その代わり、投資家に定期的に配当を払わなければいけません。また投資家は株券を持つことで、会社に対する議決権(*)を持ちます。返済義務がありませんので、自己資本と呼びます。会社の業績が振るわず配当できなかったり、株価が低迷すると、投資家(=株主)は議決権を行使して、経営者を首にすることもできます。株式による資金調達は、返す義務がない代わりに、経営者は株価を上げるための大きな責任を背負うのです。

(*)会社の経営に口出しをする権利。株主総会で一票を投じることができる。

株式会社の目的は株価を上げること

この考え方は日本では評判が悪いです。最近は少なくなりましたが、昔はこれを言うと怒り出す人もいました。もちろん、会社は株主だけではなく、従業員、顧客などの為にも存在しています。しかし、株式会社の一義的な目的は、株主の期待に応えることです。そして、通常、株主の期待は自らが投資した金額が増えることです。もちろん、会社が社会福祉的なことに資金を投じることは株主にとっても誇らしいことでしょう。但し、それは会社が利益を成長させ、株価を上げることに成功していることが条件です。

法律的に、株式会社の所有者は株主です。会社の取締役・役員は、株主から委任されて会社業務を遂行・監督するのです。株主の委任の目的は、会社の成長を通じた投資金額の増加です。

会社の社会的義務はそれ以上にあり、株主だけではなく社会一般に責任を持つべきだという流れが強まっていることは、十分に知っています。しかし日本では、会社は株主のもの、という大前提がもう少し理解される必要があると思います。ここで強調しておきたいと、思います。

日本人は「儲けること」に対し、何か罪悪感を感じる(感じるふりをする)文化があるような気がします。違います。株式会社は儲けることで(株主の期待に答えることで)まず社会的義務を果たすのです(念のため、儲けるために違法なことをするのは論外です)。そして株主は投資価値が上昇することで、経済的豊かさを手にするのです。

日本人はもはや裕福な国では無くなっていますデフレのせいで給与が上がらないことと、家計の金融資産保有の額が、外国と比較し極端に少ないことが原因です。他国の家庭は、株式投資を通じて比較的豊かな金融資産を保有していますが、日本は現金に偏っています(現金はそのままでは増えません)。

株式投資をすると、嫌でも自分事として経済について関心を持ちます。政府の経済政策(実はこれが一番株価全体に影響します)にも自分事として関心を持ちます。よって、お粗末な経済政策(この前の消費増税はその典型)には当然反対するし、その観点でまともな議員に投票します。日本はこの仕組みが働いていません。経済政策も他人事、何かお気楽な理想論を語ったりするのが、関の山です。株式投資は社会の基本です。息子の世代にはしっかりと理解して欲しいと思います。

投資商品としての債券・株式

債券や株式投資は、投資家から見れば会社に直接に資金を供給することになります。その点では共通ですが、投資商品としての性質は大きく異なります

債券は、投資金額に対して一定の利息が付きます。そして期日(満期)に投資金額(元本)が返されます。債券は、満期と利息が必ず定まっています。例えば5年満期、3%の利息付とか。1億円投資した場合、毎年3百万の利息が5年間支払われ、満期に1億円が戻ります。

株式は、投資金額に対して配当が支払われます。満期はありません。投資家が元本を回収するには、株式市場で売却(現金化)する必要があります。売却時点の株価によっては、儲けも損もありえます。また配当も、その会社の業績によって金額が変わってきます。

このように書くと、債券は安全で株式は危ないように思えますが、大きく利益を得るチャンスは株式の方にあります。各々のプラス、マイナスを整理します。

債券:(+)一定の利息が得られ元本も保証されている
(-)それ程高くない利息以上の収益が望めない

株式:(+)配当利回りは通常利息より高い、また、株価値上がりの利益を狙える
(-)会社の業績によっては配当が出ないこともある、また株価も下がる可能

債券はローリスク・ローリターン、株式はハイリスク・ハイリターンといって良いでしょう。投資に何を期待するかで、この二つを使い分けるのです。次回説明しますが、投資の基本は長期投資ですので、その意味で株式投資の理解が極めて重要です。

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