
r>g(資本成長率>経済成長率)が持つ二つの意味
前回、フランスの経済学者、トマ・ピケティが大著「21世紀の資本」において、r>g(資本収益率>経済成長率)が成立していることを、統計的事実として証明したことを説明しました。
この、今や有名になった式、r>gには二つの意味があります。いずれも投資に重大な示唆を与えてくれます。
1、金融収益は労働収入を上回る
2、お金持ちほどより高い金融収益を得られる
金融収益は労働収入を上回る
r(資本収益率)とは、文字通りお金そのものを運用して得られる収益の、伸び率です。代表的な運用対象は株式です。投資収入の伸び率と言い換えても良いでしょう。ざっくり8%程度が期待される収益率でしょう。
g(経済成長率)は、GDP(国内総生産)の伸び率です。世界を平均すると、名目で4%、インフレ率2%を控除して実質2%程度でしょうか。何度も言いますが、日本だけが0%です。労働収入の伸びは、経済成長率を超えられません。よって4%程度が上限と考えて良いでしょう。
投資で運用すれば8%、せっせと働いて4%、なんか不公平、納得いかないと思われましたでしょうか?
しかし、金融的な感覚だと「そりゃそうでしょう」と思います。
ポイントは「リスク」です。
投資はリスクが付きまといます。株価は上がったり下がったり、常に変動します。
一方、労働収入はどうでしょう?
貴方の給料は「突然」大きく下がりますか?大きく上がりますか。そんなことはないですよね。労働収入は、ある程度安定的に見通すことができます(*)。
(*)ここで労働所得とは一般的な雇用者の給料を想定しています。
金融的に考えると、リスクの見返りがリターン(収益、収入)です。リスクの大きい金融投資の方が、労働による対価より大きくて当然なのです。以下投稿も参考にしてください。
まだ納得いかないですか?
それでは、債券投資と株式投資のアナロジーで考えてみましょう。以下をまず参照ください。
労働収入は、債券投資の利息(Fixed Income)に相当します。貴方は、貴方の生活を売って、一定の安定収益を得ているのです。まさに固定収入(Fixed Income)です。
株式投資家は、会社の収益そのものを購入しています。会社の経営が順調であればプラス、失敗すればマイナスもあり得ます。そのリスクを取ってリターンを狙っているのです(**)。
(**)この意味で創業者や会社役員の所得の性質は金融収益に近いです
債券投資はローリスク・ローリターン、株式投資はハイリスク・ハイリターンです。リターンだけ捉えれば、株式投資>債券投資(≒労働収入)なのは当然なのです。
債券投資と株式投資の違いについて、より理論的な考察は以下を参考にしてください。
ここで勘違いをしないでください。私は投資の方が労働より偉い(尊い)など、価値観について述べているのでは全くありません。
歴史的に r>g が成立しているという、その冷徹な事実を述べているのです。
良くも悪くもリターンとはそういうもの、金融論的にも納得、と言っているのです。
ここで「格差是正だー」と騒ぐのも良いでしょう。しかし、この事実を踏まえて、もっと身近に自分でできることも始めませんか。
それは、自分も投資を始める、ということです。深いリターンの海に泳ぎだすのです。
若い人は月に3万円から始めましょう。若い人には時間という大きな財産があります。複利という頼もしい味方もいます。
年配の方も、無駄に銀行預金にお金をおいていませんか。投資は今やネット証券で簡単にできますよ。正直、証券会社の外交員に相談することはお勧めしません。自分で情報を取得しましょう。投資に関する書籍、ネット情報(このブログもささやかながらその一つです)など、投資に関する情報は巷に溢れています。
ここで一つの注意事項。日本株だけに注目しては大失敗します。全世界の株式に投資することを基本としましょう。米国株だけでも良いでしょう。今やボタン一つで手軽にグローバル投資が可能な時代です。
日本は指導者層のレベルが低く、相対的に優秀な一般国民が割を食っている国です。日本株を無視して外国株に投資することも、一つの意思表示になると思います。若い優秀な人は、日本企業に勤めず、積極的に外資系企業に就職しましょう。これもメッセージです。
要は国民が幸せになれば良いのです。外国企業にどんどん進出してもらって、日本企業を焦らすのです。政治家、官僚も繋がっています。
幕末の昔から、日本は黒船が来ないと変わらないのです。日本の縛りから、脱出しましょう(それが日本回復の一つの道です)。
次回、2、お金持ちほどより高い金融収益を得られる について説明します。