息子の為の金融論24~金融政策の本当のところ⑥
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アベノミクス 自業自得の頓挫

前回まで金融政策について説明してきました。「マネタリーベース」と「マネーストック」の違いを良く理解して、以下の纏めを読んでください。

  • 金融政策とはマネタリーベースを通じてマネーストックの増減をコントロールすること
  • マネタリーベースの増加はマネーストック増加の為の必要条件であるが十分ではない
  • インフレ期待醸成が加われば必要十分になる(子守協同組合の例をを思い出そう)
  • アベノミクスの初期は異次元緩和と明確な目標設定でインフレ期待醸成に成功
  • しかし消費増税によってインフレ期待は剥落、10%まで上げたことが止めを刺すかたちに

財政政策 期待される「最後の砦」

アベノミクスは折角その初期に大きな成功をおさめたのに、相次ぐ増税によって「緊縮政策」政権とみなされ(実際政府支出の伸びは僅かなものです)インフレ期待は消え去りました。マネタリーベースばかり積み上がりマネーストック増加への道筋は途絶えてしまいました

加えてコロナショックに襲われ、もはや金融政策だけでは経済再生の見通しは立たず大規模な財政政策が必要な状況です。

金融政策の流れから説明すると「財政政策」とは直接マネーストックを増やす政策と理解するとわかりやすいです。金融政策はマネタリーベースを通じてマネーストックを増やそうとしましたね。

マネーストックを増やすのに一番端的な手段は給付金です。国民一律に現金を国が支払うのです。10万円給付は実現しましたね。手続き面では政府・自治体が大いにモタモタしました。。。情けないですね。

減税は国民が払う税金が少なくなることで、民間に残るお金が増えます。

公共事業は、国が仕事を発注することで事業者にお金が支払われます。そのお金は従業員の給与等に回り、結果民間のお金が増えることになります。

 マネーストックへの即効性という意味では 給付金>減税>公共事業 となります。コロナの緊急性を鑑みれば、給付金が最も相応しい手段でしょうね。実際海外では相当の規模で給付がなされています。

不可欠な「必要条件」 金融緩和

ここで注意すべきは 金融緩和継続が財政政策が効果を生む為の必要条件 ということです。

変動相場制下の経済にあっては、ある国が財政支出を拡大すると、長期金利の上昇を招き、結果通貨高に振れてしまいます。通貨高は、輸出減や自国労働市場への需要減など様々な経路を通じ、デフレ圧力を強めます。つまり、折角の財政支出は通貨高によってその効果が大きく減殺されてしまうのです。

この減殺を防ぐためには、財政支出と同時に金融緩和を行い通貨高を防ぐことが必要なのです。

アベノミクス前の日本銀行は金融緩和に否定的でしたので、1990年代後半から実施された財政政策は(日銀の無策による円高で)大きく水を差されたものでした。

1997年~99年は日本は金融危機など大変な状況でしたが、相次ぐ財政政策発表の度に長期金利があがり、円高になる場面を何度も見たものでした。結果、景気浮揚効果は長続きしなかったのです。

年配の方で「財政政策は効果ない」と言い張る方が少なくないですが、この時期の記憶が原因でしょう。しかし、金融緩和不在の財政政策の効果が薄いことは経済学的には常識なのです。

勉強もせずに自信たっぷりにこういった戯言(「財政政策は効果ない」)を言うのが日本人の特徴です。本当に困ったもので、自称経済の専門家も殆ど勉強していない人が多いです。「経済学など役に立たない」とハチャメチャな「俺様経済学」をテレビで垂れる人の何と多いことか。。。若い人には基本になる経済学をしっかりと学んで欲しいものです。こういう輩に騙されたいために。

円高の「神話」 トンデモな人達

ここで少し為替レートについて話をします。日本では為替について感覚的で「文学的」な解釈をするトンデモな方が多いです。そのトンデモ達は共通して円高が好きです。私は「円高の神話」と呼んでいます。

トンデモの代表例は 円高は日本の国力の反映 という主張です。
どういうロジックなのでしょう? そもそも「国力」って何? GDPの伸び率?
こういう論者の方はロジックも、国力の定義も示しません。ふわーと、感覚的なのです。
想像すると、国が強くなれば通貨も強くなる?
でも強くなるって、何? そもそも国とか、通貨って、戦ってるの?

事実は、日本の経済力はこの30年間下がり続け、世界のGDPの2割程度を占めていた規模は今や1割を下回っています(このままデフレが続けば10年もせずに5%以下となるでしょう)。
しかしその衰退の30年の間、円は基本的に強くなっているのです。
リーマンショックで最も経済的な被害を受けた国は日本ですが、その深刻な経済状況下、円(ドル円)は最高値を付けました。
その円高の流れを変えたのが、アベノミクスによる日銀異次元緩和でした。

金融緩和で円安へ、そうなのです。為替レートを決めるのは、基本的には中央銀行の金融政策なのです。
考えてもみてください。為替とは通貨間の交換の比率です。
ドル一単位で円何単位が買えるか 単純化すると、そういうことです。

そう考えると、ドルが大量に供給されると一単位あたりのドルの価格は下がりますよね?
豊作だと穀物の値段が下がるのと同じです。

リーマンショック後、アメリカ(FRB)は大量のドルを供給して経済を支えました。一方日本は「蚊に刺された程度」と呑気なことを言って、金融政策のスタンスを変えませんでした。ドルはジャブジャブ、円はそのまま、猛烈な円高が到来するのは容易に予測できたのです。

その後日本は形だけの「金融緩和」をちょぼちょぼと出し続けましたが火に油を注ぐようなものでした。何せ白川総裁は(「白い日銀」)は「金融政策無効論者」ですからね。時の民主党政権と合わせて、日本は経済的な地獄を見た時代でした。

ヘタレ文系&東大法学部不況

金融緩和は財政政策が効果を生む為の必要条件であるとか、他国の金融緩和についていかないと通貨高に見舞われるとかは、標準の経済学から予想される帰結です。

日本以外の国の経済政策は、標準の経済学から得られる知見がベースとなっています。

日本だけが、経済学を無視して、独特の官僚的なお作法に基づいた政策が行われます。

私はこの背景には二つあると思っています。

  • 日本人の経済リテラシーが異常に低いこと:特に、いわゆる知識人といわれる層が酷すぎる。「知識人」は著名なほど高齢者が多いが、彼らは多くは文系で、有名大学出身者でも殆ど勉強していない。勉強しててもマルクス経済学が多く、経済を数字で分析する手法を学んでいない。否、そういう分析を軽蔑する風潮すらある。
    経済人も酷い。経営者の多くは文系で、彼らも勉強していない(彼らは宴席でいかに勉強しなかったかを自慢しあう)。日本経済新聞が全て正しいと思っている。会社経営とマクロ経済政策が同じだと、素朴に(英語でいうナイーブ、馬鹿ということです)信じている
  • 経済政策運営が法学部出身者中心で行われていること:財務省、日銀、そして経産省など経済政策を司る官僚の殆どは東大法学部出身海外では経済学部出身者が政策を立案する。トップからして違う。アメリカではリーマンショック時のFRB議長バーナンキは経済学者、次の財務長官に指名されたイェレンもそう(因みに彼女の夫もノーベル賞を受賞した経済学者)。私が長く住んだシンガポールの官僚も全て学者級、あの中国の中央銀行もアメリカの大学(院)卒業者が多い。
    要は、日本では経済の素人が政策を作成しているということ。しかも法学部出身独特の考え方、すなわち法律が全てに優先し「何のために法律が存在するのか」など考えもしない。前例踏襲が基本。権威主義。
    不確実な将来の予測が基本になる経済と法学部の考え方は水と油なのです。

私は、日本の長期不況の原因は「ヘタレ文系」と「東大法学部」にあると思っています(もちろん政治家に責任があることは定義上自明です)。大学トップ、日銀総裁、そして財務大臣は英米カナダ等から人材をリクルートすることが最も賢明です。日本人(特に60代以降)には無理です

彼ら海外人材は、ボーナスをGDP成長率とリンクさせれば、喜んで仕事を成し遂げるでしょう。

そしてそれは日本人全員にとってとてつもなく幸せなことなのです。若い世代は、次のトップは日本人とするべく、その間まともな経済学を勉強しておいてください。上の世代の様にならないでください。

 

 

 

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