息子の為の金融論28~金融政策の本当のところ⑩
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物価が意味していること

物価とは、モノ・サービス全体の値段の伸び率でした。物価がプラスのときはインフレーション、物価がマイナスの場合はデフレーションです。日本はデフレーションが続いている、世界でも珍しい国です。

 物価は何を意味しているのでしょうか?インフレーションとは、モノ・サービスに対してお金が相対的に「余っている」状態です。

モノ・サービス全体が100単位あるとします。また、世の中に出回っているお金の量が100単位だとします。この場合、モノ・サービスの1単位はお金1単位と交換できますね。

さて、モノ・サービス全体の量は変わらないまま(100単位)、お金の量が増えたとしましょう(110単位)。この場合、モノ・サービス全体とお金の交換比率は1.1となります。この変化が一年かけて生じたとすると、インフレーション率は10%ということになります。(1.1-1.0)÷1=10%です。

 デフレーションはこの逆です。モノ・サービスに対してお金が相対的に「不足している」状態です。

 モノ・サービスに対してお金が余っているとは、要は「人々が十分な購買力がある」ことを意味しています。逆に不足しているとは(文字通り)「人々にお金が無い」状態です。

 日本ではインフレに対してネガティブな印象を持つ人が多いですが、基本的にはインフレーションの時は人々のお金が増えている状況、つまり皆が豊かになっているのです。事実、日本の高度成長期は常にインフレの状態でした。また、成長著しいアジア各国は皆インフレです。

 デフレは逆で、皆が貧しくなっている状況の反映です。この事実は、日本のこの30年間が示しています。日本はこの30年給料が上がっていない、恐らく世界で唯一の国です。

インフレーション・デフレーションの原因

ではインフレーションやデフレーションはどのように起こるのでしょうか?

物価は、モノ・サービスと(流通する)お金の交換比率でしたね。

ということは、モノ・サービスの量が一定とすれば、お金の量が増えればインフレ、減ればデフレになることは自明です。各国の中央銀行が、物価の番人の責務を担っている所以です。中央銀行はは、金融政策によってお金の量を調整するのですから。

 ここでお金の定義を思い出しましょう。「流通する」とわざわざ注釈をつけたのは、物価に関係するお金とは「マネー・ストック」であることを強調するためです。お金の定義に「マネタリー・ベース」と「マネー・ストック」の二種類があったことを思い出してください。

 日銀の「異次元緩和」はマネタリー・ベースの急拡大を通じてインフレ期待を醸成し、結果マネーストックを増やすことが目標でした。当初は成功したものの、消費増税の悪影響でインフレ期待は腰折れ、マネー・ストックは停滞した状況が続いています。加えてコロナ禍で、日本経済は財政による「直接的な」マネー・ストックの拡大が急務の状況です。

 さて、デフレにある日本経済は、モノ・サービス>マネー・ストック の状況にあると言えます。こういう状態では、どんなに財政出動してマネー・ストックを増やしても、インフレは生じません。

財政破綻を煽る「専門家」たち

「ハイパーインフレ」「財政破綻」起こらない

良く「ハイパーインフレが」「財政破綻が」とTV等で騒ぐ自称「専門家」がいますが、彼らは全くわかっていないか、わかっていて確信犯で嘘をついているか、二種類です。

 まず「ハイパーインフレ」は、マネーストックを一定とすれば、モノ・サービスが劇的に(ハイパーに)減らないと生じません。モノ・サービスが急激に減ることは考えにくいです。あるとすれば、戦争・災害で工場等供給手段が破壊されたときです。事実、世界の歴史では、大きな戦争の後にハイパーインフレが起きています。第二次大戦後のドイツなどです。

 またマネーストックは急激に増えるどころではありません。全く増えないこと、ゆえにデフレから脱出できず、低迷を続けているのが日本経済です。マネーストックが増えることを心配する状態ではないのです。

「財政破綻が」と騒ぐ輩ですが、彼らに「破綻って何?」と聞くと、大体二つの答えが返ってきます。一つは「ハイパーインフレが生じる」ですが、この非現実性は上で述べました。

 もう一つは、政府が国債を返済できなくなる、という答えです。これには「借り換えたら良いでしょう」と返答すれば十分です。事実、国債は借り換えるものです。何の問題もありません。唯一インフレが問題になるのですが、日本が苦しんいるのは「デフレ」です。インフレになりたくてもなれないのが問題なのです。

自称「専門家」~「馬鹿」か「嘘つき」 

自称専門家には二種類います。

 一つは、本当に「ハイパーインフレ、財政破綻」を信じている輩です。彼らは経済学など全くの素人です。財政の意味もわかってないでしょう。国と家計を同じものと考え、素朴に(馬鹿という意味です)日本の借金は大きい、大変だーと叫んでいるだけです。TVに良くでる評論家の殆どはこの類です。聞く価値は全くないのに、TVに騙される人は多く、日本国民の多くは「借金がー」と刷り込まれています。本当に困ったものです。

 もう一つは確信犯達です。官僚寄りの経済学者に多いです。彼らは流石に、日本が財政破綻など起こさないことは理解しています。しかし、霞が関に擦り寄って、財務省や経産省の都合の良い論説を繰り広げます。財務省は増税することが目的化した組織です。旧日本軍(末期)のように、勝ち負けなど関係なく戦争を続けた構図に似ています。また、自分たちの権益を保ちたい意図も強く感じます。

経産省は、経済の「供給側」に深く入り込みたい意図が常に働く組織です。どういうことかというと、経済の需要側を刺激する財政政策は、彼らにとってうまみがないのです。経済の問題は供給側にあるとして、やれ産業政策だの、企業に口を出せる政策を好むのです。企業に影響力をもって、天下りなど利権を保ちたいのでしょう。

有名大学の経済学者ほど、霞が関に骨抜きにされています。東京財団の政策の酷さについては、昨年記事にしました。

騙されない為に必要なこと

「馬鹿」と「嘘つき」に騙されない為には、国民がきちんと勉強する必要があります。その点、日本人の「経済・金融リテラシー」は世界最低水準です。諸外国では少なくとも大学出はそれなりのリテラシーを持っています。日本人は、特に高年齢層は、大学で殆ど勉強していません(理系は除く)。団塊の世代は「学生運動」、その下50歳~60歳台は「大学レジャーランド」の時代です。

彼らは「大学でいかに勉強しなかったか」を自慢げに話すのです。そのくせ、「日本の財政を改善しなくては」と説教を垂れるのです。

若い人はきちんと勉強してください。日本の文系学者のレベルは低すぎるので、特に経済関連は英米をベンチマークしてください

このブログが少しでも役に立てばと思い、細々と続けています。

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