息子の為の金融論35~若い人への投資のすすめ 7
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債券(社債)投資は信用リスクへの投資

私は株式投資についてはインデックス投資を推薦していますので、今まで個別の「会社の見方」について、あまり詳しく説明はしてきませんでした。

しかし、債券(社債)投資については、会社そのものへの投資であり、その会社の「信用リスク」を負うことになります。その「リスクを負う見返り」として、銀行預金などより高い利回り(「信用スプレッド」と言います)を得ることができるのです。「信用リスク」が高いほど「信用スプレッド」は高くなります。ここでも「ハイリスク・ハイリターン」の法則が貫かれています。

それでは会社の信用リスクはどうやって判断したら良いのか?

一番手軽で簡便なのは格付け機関が付与する「記号を見る」ことです。

すなわち、Aという格付けが付与されていれば、それなりに安心。Bだと少し心配だけでスプレッドは高い。Cは危ない、投資はちょっと手控える、、、などです。

この様に格付け機関を参照するのはコストが低く合理的な方法で、全く否定はしません。しかし「格付け機関はどの様に判断するのか」まで踏み込むと、投資の面白みが一層深まりま

このブログは、投資にかかわる理論的な事柄(「通常の」投資ブログではあまり説明されない)を敢えて踏み込むことで、主に若い人に「騙されないための金融・経済知識」を紹介したい趣旨で続けています。会社の信用リスクの判断についても、踏み込んだ説明をします。これから数回、会社の財務諸表について解説していきます。

尚、以下の説明は、個別の会社の株式に投資したい場合にも、役に立つ知識でもあります。但し、公開情報が基本ですので、株価には常に「織り込まれている」情報であることは、念押しをしておきます。

損益計算書と貸借対照表 企業情報の宝庫

会社は定期的に「財務諸表」を作成、提出しなければなりません。何故なら、多くの利害関係者の存在無しでは会社の活動はあり得ないからです。利害関係者とは、債権者・株主・従業員・その他と多数ですが、法規は主に「債権者と株主」を念頭に置いております。

会社の財務諸表の目的は以下情報を正確に公表することです。

  • 会社の年間の成績表(⇒損益計算書 Profit And Loss Statement  P/Lと略す)
  • 会社の財産の状況(⇒貸借対照表 Balance Sheet  B/Sと略す)

損益計算書は単年度の経営成績です。会社の「フローの状況」を説明するものです。

貸借対照表は財産目録及び借入明細です。会社の「ストックの状況」を表すものです。

当たり前ですが、両方ともに重要な情報で、どちらも欠かせません。ただ、どちらかというと株式投資家はP/Lを、債券投資家はB/Sを重視する傾向があります。

まずはP/Lから説明していきましょう。

損益計算書 会社の年間成績表

損益計算書の基本 売上、営業利益、そして純利益

架空の簡略版ですが、損益計算書は以下の様なものです。

売上高(商品の販売代金)から始まり、そこから費用などを控除して、利益を段階的に計算していきます。営業利益⇒税前利益⇒税後利益(純利益)、の順となります(オレンジ色の箇所)。

営業利益は文字通り本業が稼いだお金、そこから一時的な支出と支払利息を控除した税前利益、法人税を支払って税後利益(純利益)が残ります。

損益計算者は「1年間の記録」であることを改めて意識してください。

損益計算書の売上高は、どれだけ商品を販売できたかを表しています。トップラインとも呼ばれます。売上高は儲けの基礎ではありますが利益そのものではないです。日本の会社は売上を重視する傾向にありますが、海外企業はそれほどではありません。

営業利益は「本業の儲け」を表している重要な指標です。営業利益を高めることは会社の基本であり、従業員の報酬を営業利益とリンクさせている会社が多いです。

純利益は法人税支払い後に企業に残る利益です。ボトムラインとも呼ばれます。純利益は配当の源泉となります。投資家にとって重要な項目です。

会社の「稼ぐ力」が解る指標 ~ EBITDA

損益計算書から会社の「稼ぐ力」を見抜くには?

「売上高」ではなさそうですね。やはり本業の「営業利益」?いや、やはり配当の源泉の「純利益」かな。

いろいろ議論があり得ますが、株式投資やM&A(Mergers and Acquisitions: 会社の売り買い)ではEBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)という指標が使われます。直訳すると、法人税、利息、減価償却控除前の利益、となるでしょう。

実務では「営業利益に減価償却を足し戻す」ことにより計算することが一般的です。上の例では EBITDA=300(営業利益)+100(減価償却)=400 となります。

なぜ純利益でも営業利益でもなく、EBITDAなのでしょう?

まず、純利益には特別損益が含まれます。特別損益とは文字通り「特別(一時的)」な損益ですので、常時(毎年)発生するものではありません。会社が多額の特別利益を計上して純利益が膨れ上がっても、それは「稼ぐ力」が増した訳ではありません

次に営業利益ですが、減価償却の影響を取り除く必要があるのです。減価償却とは、過去の投資額を複数年で割って毎期の経費として計上することです。例えば10億円で工場を建てたとします。それを償却期間(10年としましょう)で割ると毎年1億円です。この1億円を経費として計上したものが減価償却です。この様に減価償却とは過去の費用を将来に分割しているだけとも言えます。減価償却を含めると会社の未来の稼ぐ力が過小評価となるのです。

なぜ利払い前、税引き前なのでしょう?

それは一言で言うと国際間比較のためです。金利と税率は国によって異なります。そしてそれは一企業ではどうにもならない要素です。よってその影響を受けない段階の利益でないと、本当の稼ぐ力の比較にならないのです。

この様に、EBITDAは会社の稼ぐ力をグローバルに比較するのに便利な指標です。今や投資はグローバルに展開しないと意味はありません(日本の投資市場は残念ながらマイナーに落ちぶれました)。P/Lを見る際には是非EBITDAに注目してください。

次回、B/Sについて説明します。

 

 

 

 

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