
債券と株式の投資商品としての性質を説明しましたが、資産運用の中心は株式投資、債券投資は補完的な役割になることが一般的です。以下、説明していきます。
株式投資の長期的リターン
株式は10年~20年の期間持ち続けるつもりで投資すれば相当の収益(リターン)が望めます。短期的に株価は大きく上下しますが、長期的には上昇するからです。以下のグラフを見てください。
(出典)年金積立金管理運用独立行政法人 HPより
1969年に100万円を投資した場合、2018年には国内株式で18倍、外国株式で28倍!に膨れ上がっています(何と100万円が2800万円に)。期間が長すぎますか。それでは以下のグラフを。
(出典)年金積立金管理運用独立行政法人 HPより
今度は期間が2001年からの表です。外国株式では2.4倍、国内株式では1.6倍です。この期間だと海外に国内株式が大きく差をつけられますが、それは日本がずっとデフレだからです。それでも1.6倍、海外株式を運用すれば倍以上に元本が膨らんだわけです。同じお金を箪笥にしまいこむと100万円で変わらず。これだけの差がつくのです。ちなみに、経済学(金融論)ではこの差を「費用」(コスト)と考えます。正確に言うと「機会費用」といいます。株式投資をせずに箪笥にしまいこんだ為に2.4倍の機会費用が発生した、と考えます。後で詳しく説明しますので現時点は「機会費用」という言葉と考え方を覚えてくださいね。「しないことによるコスト」これが機会費用です。
分散投資で得られる長期的リターン
上記で示した通り株式投資は長期的には多くのリターンを得られます。ここで注意して頂きたいのは、上記グラフは株式を分散投資した結果だということです。個別の株式でも、うまく選べばグラフをはるかに上回るリターンが生じている銘柄があります。でも逆に、極端には倒産などで、投資した金額がゼロになった銘柄もまたあります。つまり個別株式に対する投資はバラツキ(リスク)が高すぎるのです。個別株式投資が成功するのは「うまく選べた」ときのみです。
貴方は株式をうまく選べますか
うまく選ぶって当たり前でしょう、と思ったかもしれません。しかし貴方はどの株式が値上がりするかうまく選べますか。選べるとすると、その理由は何ですか。
- その会社を良く調べて成長力があると判断した? しかしあなた同様、あるいはそれ以上調べた人は沢山いる筈です。その人たちの買いで、値段は既に上がっています。
- 他の人が知らない会社の重要事実を知っている? 知ったうえで株を買ったらそれをインサイダー取引といいます。貴方は逮捕されます。刑事罰です。仮に酒場で誰かの(重要事実の)話を聞いて買った場合でも、逮捕されます。酒場で話をした人も同じです。因みに、インサイダー取引はほぼ100%発覚します。私は周辺でいろいろなケースを知っていますが、隠すことはできないと確信しました。
- 証券会社などに勧められた? 証券会社には推奨銘柄があります。しかし、推奨銘柄は推奨される背景があり、既に株価が上がっていることが多く、高値掴みに終わるのが関の山です。
株価はほぼ全ての情報を反映している
「うまく選べるか」と質問しましたが、貴方が「買い」と確信した銘柄は、貴方の確信が正確なほど、既に他の誰かの買いで十分に値が上がっています。皮肉にも貴方の確信が間違っている場合に値段が安いままなのです。唯一、貴方だけが知っている重要事実がある場合は別ですが、その状態で株を買うとほぼ100%逮捕に繋がります。
一言で言えば、個別株式について市場を出し抜くことはできないのです。将来上がると皆が思う銘柄は既に値段が上がっているのです。金融工学的にいうと、個別株式は上がる下がるが同じ確率になる価格で瞬時に値付けされる、などと言います。効率的市場仮説と呼ばれ、実証的にも強く支持される仮説です。
分散投資の意味すること
個別投資はリスクが高く値段を出し抜くことはできない、と説明しました。一方、分散投資は個別株のリスクを抑え、長期的に株式市場全体が実現するリターンを狙おう、とする戦略です。
分散投資がどの様にリスクを抑えることができるのか、株式市場全体が実現するリターンの意味などについて、次回以降説明します。
いよいよ本ブログの一つの目的である投資理論の説明に入ります。