
今週(2022年1月17日~)株価の下落が止まりませんが、米国金利の上昇が原因、と報道されています。そこで株価と金利の関係について、理論的に考えてみたいと思います。
<投資は自己責任で>
割引配当モデルによる説明
株価を説明する理論式としては、以下の「配当割引モデル」の説明力が強いと考えています。
ここで配当性向を100%とするとDは一株当り利益、gは利益成長率と読み替えることができます。
rは期待収益率とされますが、広い意味では「割引率」です。将来は不確実でありますから、その不確実性に応じて将来の収益を現在の価値に(文字通り)割り引く比率です。
この割引率は、リスク資産である株式を保有することのリスクプレミアム(p)と、無リスク利子率(長期国債金利y)の合計です。
r=p+y と表現しましょう。
「金利が上がると株価が下落する」とは、yが上昇すればr(割引率)が上がるからとの、ロジックでしょう。
金利と経済成長、インフレとの関係
しかし話は単純ではありません。
通常金利、特に長期の(国債)金利が上昇するのは、景気回復(期待)の反映です。景気回復期には、通常企業の収益も増加します。すなわち、gも上昇するのです(y↑⇒g↑)。よってこの意味では金利上昇は株価に中立なのです。
次に金利の上昇はインフレ(期待)の反映でもあります。インフレは通常、企業の名目収益にプラスに働きます。すなわち、この場合もgは上昇するのです(y↑⇒g↑)。この意味でも、金利上昇は株価に中立です。
歴史的に「金利上昇時の株価は14勝4敗」
ここで、金利と株価の歴史的関係につき、以下、岡三証券さんのレポートを参照ください。
☆40年の体験に基づく、米国金利上昇事例の回顧 -18回の金利上昇時の株価は14勝4敗【高田レポート】
https://www.okasan-online.co.jp/news/spot/takata20210622/
分かりやすく「金利上昇時の株価は14勝4敗」であることを説明してくれています。すなわち、歴史的には金利が上昇すると株価は上がっているのです!それは、上の説明でy↑⇒g↑(金利が上昇する局面では企業の収益もまた拡大する)と説明しましたが、企業の収益拡大の方がより強いということを、示しているのだと思います(y↑⇒g↑↑)。
でも今は現実に金利が上がって株が下落しているではないか、と思われるでしょう。
それは、r=p+yの、yではなくpが上がっているのです。すなわち、株を保有することのリスクプレミアムが上昇していると、考えるべきです。
米国経済は軟着陸できるか、そして日本は
なぜリスクプレミアムが上昇しているか?
それはFEDによる利上げが、景気を腰折れさせることなく、無事進めることできるか、市場が固唾を飲んで見ているからです。米国経済は利上げという新たな局面に入りますので、不透明さ(不確実性)が増しているのです。
今後、利上げが実際に実施されても、米国経済の見通しがはっきりすれば、リスクプレミアムの下落から株価が上昇することは大いに期待できます。FED(と米国政府)のことですので、マクロ安定化政策は無事成功させると、信頼して良いのではないでしょうか。
問題は日本です。岸田政権のもと、頓珍漢な経済政策が実施されるのが心配です。インデックス投資におけるリスクプレミアムの多くはマクロ経済政策が左右します。日本株のプレミアムが上昇していくことを懸念しています(p↑↑↑)。
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