真実の経済学:為替レートについての整理
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<この投稿の要旨>
「50年ぶり」の円安と騒がれているが、それは「実質実効為替レート」だけのこと
•「実質実効為替レート」は為替の現場で使われない「どうでもよい」値
•「円安ガー」と騒ぐ人々は、日本のデフレ脱却を望まない確信犯

現在(2022年3月31日)円安が続いています。

日本経済新聞や東洋経済など経済誌が「円安ガー」「日本の購買力ガー」と騒いでいます。

経済評論家の一部は「日銀は金融緩和を止めよ」と「警告」を発しています。

あまり経済に詳しくない人は、ぼんやりと「日本の国力が衰えた表れ」と感じているようです。

そこで今回は、長期推移を確認し、現在の「円安」が「どの程度の位置づけ」なのか、データで確認してみます。

ドル円の長期推移

1980年からプロットしたドル円の推移です。

比較的最近では2014年~2016年頃は現状程度の円安であったことが確認できます。この頃はアベノミクスの初期で、経済的には復活基調でした。

注目して欲しいのは2010年頃の円高の状況。この頃は民主党政権で、経済政策がメチャクチャな状況でした。「円高は国力の反映」などと大臣が宣い、日銀は頑なにインフレ目標導入を拒否し続けた頃です。企業は円高に苦しみ、学生の就職難は酷いものでした。アベノミクスの金融緩和で、この酷い状況は劇的に改善したのです(でも、その後の消費増税でアベノミクスは頓挫するのです)。

このチャートを見ると、現在の「円安」は大騒ぎするほどのものか?と思いませんか。

実効為替レートの長期推移

同じく1980年からの「実効為替レート」の推移です。

「実効為替レート」とは,多数の通貨との為替レートを貿易額をウエイトとして計算した「(加重)平均レート」のことです。

対ドルだけでなく、対ユーロ、対ポンド等についても、その国との貿易額の大小を勘案して計算されてる訳です。「実効」と難しく言っていますが、やはり「平均レート」と考える方がスッキリします。

さて、その円の平均レートですが、過去の推移から見てもそれほど円安になっていないことが確認できます。日経新聞などは何を騒いでいるのでしょうか?

それは次に説明する「実質実効為替レート」を(敢えて)取り上げて、騒いでいるのです。

実質実効為替レートの長期推移

はい、この「実質実効為替レート」の推移をみると、確かに1980年代の水準以下にまで円安が進んでいますね。

さて、「実質実効」の意味ですが、「実効」は先に説明した通り「平均」と理解すればほぼ当りです。

「実質」は、一言で言えば、2国間のインフレ率の差で調整すること、です。

ドル円を例にとって、アメリカのインフレ率4%、日本1%、の場合、(1.01÷1.04)の調整値をかけるのです(名目値よりも円安になります)。この調整を、多数の通貨にも同様に行い、平均値を取ったものが「実質実効為替レート」です。

私も為替に長く携わっていますが、この「実質為替レート」を意識することはないです。話題にもなったこともないです。正直、どうでもよい数値だと思います。

日経新聞などは、敢えてこの「実質」レートを選んで円安ダーと、騒いでいるのでしょう。

全てデフレが原因

日本は妙に円高が好きな人が多いです。

通貨が高いのは国の実力、など訳が分からないことを言う「専門家」もいます。

彼らが問題にする「実質実効為替レート」が円安になっている理由はわかりますか?

それは日本だけがデフレだからです。

先の調整値を思い出してください。日本のインフレ率が世界的に低いから、調整値(割引き)が大きくなるのです。

この「実質」レートを円高にするには、日本のインフレ率を上げればよいのです。

なのに彼ら(円高好き)は、金融緩和に反対し、インフレを問題視するのです。

訳がわかりませんね。もともと、円高好きの多くの「専門家」はマクロ経済学を理解していません。「俺様経済学」の、日本でしか通用しない「似非専門家」ですから、しょうがないですね。

今回整理した通り、現在の円安は過去の推移をみてもそれほど騒ぐ必要のないレベルです。

唯一、「実質」レートだけが80年代に戻るような円安ですが、その理由はデフレだからです。

実質レートはどうでもよいですが、デフレからの脱却は不可避です。

そのためには「金融緩和」+「財政出動」が必要です。

しかし「円安ガー」と騒ぐ輩に限って、このポリシーミックスに反対するのです、、、

こういったトンデモに騙されない為にも、現在の円安について正確な理解をもちましょう!

 

 

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