
ヤップ島はグアムとパラオの中間に位置する群島です。その島では「フェイ」と呼ばれる石のお金(石貨)が使われてきました。大きいのは3メートル(!)程のものもある、真ん中に穴の空いた丸い石です。よく漫画などに出てくる、原始時代のお金そのものです。
フェイはとても重いので運ばれて使うことはありません。路上に置いたまま(時には海中に沈んだまま)「使われる」のです。「使われ方」は、取引がある度に石貨そのものに、或いは別の台帳に、その取引記録を刻んでいく(記帳する)のです。例えば土地の売買があったとき、Aさん(買い手)からBさん(売り手)に、フェイ(お金)の持ち主が変わったことを刻むのです。次にBさん(今度は買い手)がCさんから(例えば)高価な服を買ったなら、Cに変わったことを刻む。この記録を繰り返すことで、お金として使われるのです。
フェイの価値はどのように決まるのでしょう。フェイは遠く離れた島の石を材料として作られ、カヌーで大変な労力をかけて運ばれてきます。労力が掛かったものほどそのフェイは価値が高いとされます。
つまりこういうことです。
「この大きなフェイは大変な人手と長い時間を掛けて初めて手に入れることができるものだ。 そのフェイを持っているお方はお金持ちに違いない」
「そのお金持ちがお金として使うフェイに価値があるのは当然だ」
ヤップ島は人口が少なく、またフェイは比較的大きな取引に使われていたので、誰がどのような取引に使ってきたのか、その履歴は皆の知るところなのでしょう。ゆえにフェイのシステムは成り立つのでしょう。
しかし注目してもらいたいのは、フェイが成り立つのは価値そして取引履歴(記帳)への「信用」なのです。何かを思い出しませんか。そう、「紙幣」と「(お金としての)預金」が成り立つ仕組みと根本は同じなのです。すなわち「信用」。フェイは大きな石貨という形で、その信用を表現しているのです。
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