息子の為の金融論11  株式投資の理論①~株価と経済成長
スポンサーリンク

これから株式投資の理論について説明していきます。CAPM(Capital Asset Pricing Model: 資本資産価格モデル)」というW.シャープ、J.リントナーらにより1960年代に発表された理論です。シャープ氏はこの業績を持って1980年にノーベル賞を受賞しています。
「難しそう」と思うかもしれませんが、この理論のアイディアをできる限り平易に説明できればと思っています。この理論の一つの重要な柱「資本コスト」は、日本企業が無視し続けてきた「コスト」ですが、今やこの考えを無視して企業経営はありえません。それではゆっくりと行きましょう。少し回り道に感じるかもしれませんが、まずは「経済成長」から説明します。

株価上昇の根本要因は経済成長

まず株価はなぜ上昇するのでしょうか?それは企業が成長するからです。それでは企業が成長する最大の要因は何でしょう?それは経済が成長するからです。
当たり前、あるいは禅問答の様に聞こえるかもしれませんが、経済成長⇨株価上昇、この因果関係は重要です。

経済成長が重要

経済成長とはGDPが増加する事です。GDPは社会全体の付加価値の合計で「金額」で計算されます。この付加価値が増加することは、企業の利益が増えている事を概ね意味します。ここで重要な事を申し上げますが、個別企業の利益拡大には新製品開発など個別の(ミクロ)要因はもちろん重要ですが、企業全体を考えると、一国あるいは世界経済が成長方向にあることが(利益拡大に)決定的に重要です。
そして経済成長の方向性を決めるのが国の金融財政政策なのです。

マクロ経済安定化への国の役割

世界標準の金融財政運営は、インフレ目標+機動的な財政政策の両輪です。日本のバブル崩壊以降の経済政策失敗、長期低迷が特にアメリカで研究され、標準化されています。リーマンショック後のアメリカはバーナンキ等が主導し、この両輪によって(地雷原のくせに)最も早く経済復活を成し遂げましたね。一方日本は「(リーマンショックは)蚊に刺された程度」と当時の財務相が発言、円高を放置するなど経済対策は無しも同然、結果先進国で最大の経済的被害を受けました。因みに今回コロナでも同様の誤りを犯そうとしています。

この様に、通常の国では「金融政策+財政政策」を経済運営で機能させ、一定の成長率を達成する事を目標とします。もちろん定期的に外的ショックが訪れ(今回コロナはショックの代表)単年度で実現できない局面もありますが、長期的な趨勢を見れば3%〜5%程度の成長は実現できています。そして連動して株価も上昇しています
唯一の例外が日本です。長期的にデフレを放置し経済成長が達成できていません。そして株価も上がっていません。アベノミクスの初期で上昇はしましたが、それはあまりにも酷い民主党の経済対策の反動の意味が大きく、世界的に株式のパフォーマンスが最も低調な国です。

日本の経済政策の異常さ

「金融+財政」による成長率目標は世界的な標準です。特にアングロサクソン及びその影響が大きい国々で明確です。私が永く暮らした東南アジアもそうです。特にシンガポールは見事なまでに経済政策が明確でした。中国もそうです。中国の経済官僚はテクノクラートです。アメリカの大学の経済学部を出ている人が少なくありません。私は中国の銀行の上層部と話をしたことがありますが、気の毒そうな顔をして「中国は日本の経済政策の失敗を研究していますので(そんなにヘマはしない)」と言われたことは忘れられません。

日本の経済対策は滅茶苦茶です。「円高は国の品格の象徴」などと発言した日銀総裁が昔いました(文学者ですか)。アベノミクスまではインフレターゲット導入を頑なに拒否したのが日銀です。財務省は緊縮路線を何があっても変えようとしません。

これでは経済は成長しようがないのです。そして株価も上がりません。日本を見れば、経済成長⇨株価上昇の因果関係は、逆説的に証明できるのです

成長経済における株式投資の期待利益率

さて、日本をわかりやすい例外として、経済成長⇨株価上昇の因果関係を説明してきました。次に通常の国が達成する平均的な経済成長率を前提とした場合、株式から期待できる利益率はどの程度でしょうか。

1. まず、経済活動においては常に生産性の改善が行われます。競争と言っても良いでしょう。新しい生産方法とか、システム投資などです。これによって一定の労働力や設備から生産される付加価値は2%程度増えると考えるのが自然です。これを実質成長率と呼びます。実質成長率は通常2%程度が期待できます。

2. 次に金融政策を考えます。インフレ目標政策では2%程度をターゲットとしますので、実質成長率2%の場合インフレ率2%を加えて、名目成長率は4%です。

3. 名目成長率4%の場合、長期金利は最低4%程度と推計されます。名目成長率以下の金利では資金の出手が応じないからです。

4. 長期金利が4%の場合、それ以下の収益率では誰も株式を購入しません。債券よりも株式の方がリスクが高いからです。前の投稿を参照ください。

さて株式の期待収益率は最低でも長期金利4%以上であることはわかりました。どの程度(4%に)上乗せが必要なのでしょうか。これは人々のリスク選好度合いによりますが、過去のデータを分析すると、株式の期待収益率は概ね8%程度が推計されます。

株式市場全体と個別株式

適切な金融財政政策が行われた場合、経済の名目成長率で4%、長期金利で4%以上、株式期待収益率で8%程度となる事を説明しました。重要なことは、経済成長率が起点で、名目成長率<長期金利<株式期待収益率 が成立している事です。

改めて注意して頂きたいのは、ここで言う株価収益率とは、株式市場全体で達成する収益率のことだということ。個別株式は、8%以上のものもあれば、3%、あるいはマイナスのものもあります。これらが混在して全体では8%程度を達成するのです。逆に言えば、株式市場全体では8%程度を期待して良いが、個別株式はわからない、のです。前の投稿を参照ください。

ここでも日本の例が逆説的にわかりやすいでしょう。名目成長率がマイナス(デフレの世界)では株式も低い収益率しか達成できないのです。デフレの経済下では、企業が収益を上げるのは大変です。モノは売れない、会社は投資をしないのですから。その中でうまく成長する会社(株価を上げる会社)もあるでしょうが、全体としては株価は低水準で推移するしかないのです。日本が長年経験したことです。

さて、株式市場全体の収益率について説明してきました。次回からは分散投資の観点で株式を見ていきましょう。

 

 

スポンサーリンク
おすすめの記事