
タイトルを読んで誤解しないでください。もちろん感染対策は基本かつ重要です。言いたいのは、このまま無策でいると倒産、失業が相次ぎ、感染による死亡者よりも自殺者の方が多くなる可能性が高いということです。不況は人を殺します。その意味で、当局により経済無策は、一種の犯罪です。
日銀無策で、円高はますます加速か
前の記事で円高への懸念を書きましたが、大変な状況になってきました。円は一時101円台に突入、現在(3/9 12時)112円半ばで取引されています。日経平均は1200円を超す下げ。円高はまだまだ収まる感じがしません。100円を切ると株はさらに下落を強めるでしょう。
こういう状況になると、海外勢は日銀の無策を予想して投機的な円高を加速します。「けしからん」と思うかもしれませんが(先に説明したように)彼らは合理的に資産運用等を行う責務があるので、予想されるのであればせざるを得ないのです。問題は無策と思われている日銀です。
各国は次々と金融緩和を進めています。
新型コロナウイルス感染拡大 各国で利下げの動き相次ぐhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20200309/k10012320371000.html
よく「これ以上の緩和には限界がある」と言われますが、国債を買う余力はあるのです。国債で財政出動してその購入で金融緩和を強化できるのです。この効果は絶大だと思います。
政府は財政政策に踏み切れるのか
さて肝心の政府ですが、いっこうに財政出動の動きが見られません。他国では着々と進んでいるし、進めるでしょう。香港は市民に対し一律14万円の支給を決めています。
香港政府 経済支援策で市民1人14万円支給へhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20200226/k10012303211000.html
財務省は「財政再建」といって反対するでしょうが、そんなことを言っている事態ではありません。将来の為に今を崩壊させるの?今が崩壊したら将来もないでしょう。
それに、そもそも日本の財政は財務省が喧伝するほど悪い状況ではありません。例えば以下を参照ください。
完全保存版!やっぱり「日本の借金1000兆円」はウソでしたhttps://note.com/waww/n/n6aa34e448f1c
上記記事のなかで、高橋洋一氏はCDS(Credit Default Swap)に触れています。CDSは私も仕事柄関係することがありますが、世界の金融機関が日本のリスクを「値付け」するものです。記事にあります通り、その価格は欧米先進国と大きく変わるものではありません。金融市場は、仮に誤った価格が付くと収益チャンスが生じますので、瞬時に価格が修正されるような、隙のない市場です。そこで付く価格の意味は、日本のエコノミストの主観的解説とは比較にならない信憑性があります。この点、CDSにも注目する高橋氏の解説は、並のエコノミストとは異なりますね。私の様なビジネスマンにも本当に納得がいきます。国のバランスシートも刮目です。
ロイターに記事が出ましたね。急激な円高・株安について麻生財務相のコメントです。
麻生太郎財務相は市場の動向について「神経質な動きがある」と指摘。慎重に動向を見極めていく考えを示した。為替介入の可能性については「コメントすることはない」と述べるにとどめた。
「慎重に動向を見極める」って、この場に及んで何を言っているのか。「経済回復に向けて全力で取り組む」と何故言えないのか。この方は腹の中で「政府に頼るな、甘えるな」と思っているのでしょう。日本の高齢者に特にみられる思考パターンです。悪質な勘違いです。
景気は自然現象か?倒産・解雇は自己責任か
日本人は、景気を自然現象と思っている人が多いように感じます。金融財政政策はその「自然な姿」を歪めるものだと。実際、日銀の異次元緩和で「本来の金融市場」が損なわれているとか、政府の財政支出は「あるべき経済構造」を歪めるなどは、経済新聞で良く見られる論調です。これは国際的にはかなり特異な考え方です。経済成長や失業率など、景気に関連する事柄はマクロ経済(学)の範疇ですが、マクロ経済は政府と中央銀行の役割無しで安定しません。この点については以下の書籍を参照ください。
不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門(双書Zero)
そして倒産・解雇と、最も相関が深いのは景気です。景気安定は政府・中央銀行の責務です。
倒産・解雇は自己責任などでは無いのです。金融財政政策「無策」の被害者なのです。
財政政策や金融政策を景気安定に使うことは、標準的なマクロ経済学の教科書に記載されています。世界の普通の国は概ねその通りの政策を行います。ノーベル経済学賞など出したことない日本だけが、独自の(ガラパゴスな)政策を行っています。
日本国民は、素人がパイロットする飛行機に乗っている様な、とても危険な状況なのです。