役に立つ経済学の考え方:積極財政の理解(国債と日銀の役割)
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積極財政を否定する人々

日本は世界で殆ど唯一、30年間経済成長が出来ていない国です。その期間は丁度、財務省が緊縮財政を始めて続けている期間と一致します。プライマリー・バランスの維持などという、世界で例のない珍妙な経済政策を続けているのが我が国日本です。

しかし、政治家の多くや東大などを中心とした「一流大学の経済学者」の多くは、緊縮財政を支持しています。その理由は、実はあまり明白ではないのですが、要は(積極財政は)「国債(そして日本円)の信任を低下させる」ことらしいです。

なぜ低下するのか?この理由もあまりはっきりしないのですが、「国債残高が増えると引き受け手が足りなくなる」と言っているようです。要は、国債を引き受けるための「お金が枯渇する」との主張です。そしてここで「お金」とは民間が保有する、現預金の総額のことの様です。

この理屈は大手メディアでも報道され、「国の借金が大変なことになっている」とNHKを始めとするメディアで繰り返し報じられますテレビしか見ない高齢者などは「大変だー」と思い込まされ、積極財政は「無責任だ」などと無責任な言説が巷間出回っています。

この全く出鱈目の言説(「大変だー」)は、国債が発行される仕組み(特にその中で日銀の役割)が、全く理解されていないからです。実は、「一流大学の経済学者」も理解していないのでは、と私は疑っています。驚くかもしれませんが、日本の経済学者などこのレベルが多いです。

さて、民間ではありますが長年財務実務に携わってきた私ですので(実際、国債ではありませんが社債も数多く発行してきました)国債発行の仕組みは我が事のように理解できます。以下、解説します。

国債が発行される実務フロー

政府が国債を発行する手続きの流れは以下となります;

  1. 国が新規国債を発行する際、民間銀行団に(国債を)売る(引き受けてもらう)ことで資金を調達します
  2. 民間銀行団は、新たに国債を買う(引き受ける)お金を、日銀に開設している口座(日銀当座預金)から支払います
  3. 日銀は、銀行が国債購入に必要な金額を、日銀当座預金を増やしてあげることで、民間銀行に融通します
  4. 民間銀行は、日銀が新たに創造した預金(日銀当座預金)により国債を購入したことになります(←預金通貨の信用創造が行われました)
  5. 政府の保有する日銀当座預金が、国債発行分増加しました

以上は、政府が国債で得たお金を(民間に)財政支出する前までのフローです。民間銀行は、彼らが保有する通常の預金(日銀当座以外の預金)を一切使っていないことに注意(←ここ重要してください。国債を買う(引き受ける)お金は日銀から融通(ファイナンス)されているのです。そしてそのお金は日銀による信用創造で産まれました。
また、この段階(財政支出前)では、お金は政府に留まり民間には回っていないことにも注意しましょう。
この状態は「マネタリー・ベース」は増えているが「マネーストック」は増えていません。この二つの違いについては、以下投稿を参照ください。

政府だけがお金を持っていても、使わないと意味ないですね。この「使う」ということが財政支出です。国債によって得たお金を民間に対して使って始めて、民間にお金が回るのです。民間にお金が回ると「マネーストック」が増えます。

実はアベノミクスによる金融緩和は「マネタリーベース」を劇的に増やしましたが、「マネーストック」は大して増えておりません。理由は「財政出動」が足りないからです。

良く「金融緩和でお金がジャブジャブ」と表現する人がいますが、民間に出回るという意味では「ジャブ」ですらありません。お金は金融部門だけで積み上がっているだけですから。

インフレと金利の問題について

以上、中央銀行を通じて国は自国通貨建国債を「財源無し」で発行できることについては、MMT(Modern Monetary Theory)が強調してくれたお陰で、徐々に知れ渡る様になりました。この点を、主流派と呼ばれる経済学者が軽視してきたことは否めません。また、国債発行によって一国全体のマネーが増える事実も、主流派はミスリーディングな議論をしてきました。すなわち、「クラウディング・アウト」と称して、国債発行が民間の資金を「奪い取る」様なイメージを醸成してきました(事実、私は学生時代、その様に大学で教わりました)。

1970年代から80年代は、インフレが経済問題の中心であったので、主流派がMMT的な貨幣感を軽視したことは、わからないでもありません。しかし2000年代からは世界的な低インフレ、ましてデフレ状態である日本の経済学者の貨幣感が「鈍かった」のはとても残念なことです。

とはいえ、国家は無限に国債を発行できる訳ではありません。MMTを信奉する方々も決して「無限に発行できる」などとは言っていません。

自国通貨建国債といえども、その発行には制約と問題があります。インフレの制約と、金利の問題、です。以下解説します。

インフレの制約

国債発行を原資に財政支出を行うと、民間に出回るお金(マネーストック)が増えます。その増えたお金は財政支出以上の需要を経済にもたらします。一国の供給能力がその需要に対応できる状況であれば問題ないですが、能力を超えて需要が増え続けるとインフレーションが起きます。4%を超える様なインフレは経済に悪影響をもたらします。

すなわち、国債を財源に財政支出は可能ですが、一国の供給能力が制約になるということです。インフレがマイルド(2% - 4%程度)な状態であれば問題ないですが、それを超え出すと国債発行が過大と判断できるのです。

逆に、日本の様なデフレ(或いはディスインフレでも)の場合は、国債を更に発行して財政支出をすべき経済状況なのです。

それなのに日本の「指導者」は緊縮緊縮と訴えます。こういった「指導者」が日本の失われた30年の犯人なのです。

金利の問題

次に金利の「問題」があります。「問題」と表現しているのは、インフレほど強い「制約」ではなく、また解決可能な問題だからであります。

ドーマー条件

問題の所在は、国債には「金利が付く」ことにあります。つまり、国債残高は新規発行せずとも金利分だけ増え続けるのです。GDP対比の国債残高を考える場合に(多くの政治家や財務省はこの比率を最重要視します)、国債はその満期が到来して同額を再発行(ロールオーバーと言います)しても、金利分だけは逓増し続けます。よって少なくとも金利分だけは税収で返済する必要があるとされます。

一般に税収の伸びは経済成長に近似するとされます(成長率をgとします、また国債金利をrとします)。
ここで g>r (経済成長率>国債金利)の条件を満たさない限り、GDP対比の国債比率は上昇し続け、維持不能になると主張されます。これを「ドーマー条件」(の財務省的解釈)と呼びます。財務省などはこれを持ち出し、プライマリーバランスの維持を強調します。

しかし「ドーマー条件」は逆にも読めます。すなわち、g>rであれば国債のロールオーバー或いは増発も可能ということです。これは政府はマクロ経済成長を実現させよ、という主張そのものです。財務省や多くの政治家は、マクロ経済成長を諦めて、ただただ国債を減らす目的に「ドーマー条件」を使っているということです。彼らはちゃんと仕事をしていないということです。日本の長期不況の原因は彼らにあり、一般国民の生産性が低いからではありません。

日銀による国債保有

この金利の問題については、別の解決方法もあります。それは、この日本で実施されている方法です。

それは国債を民間銀行から日銀が買い上げる方法です。実際、日本政府の国債発行残高の約半分は、既に日銀が保有しています。

日銀は政府の子会社です。何か反論する向きがある様ですが、株式保有や日銀幹部の人事権などを考えると、政府と日銀の親子関係は否定できません。私は長年企業財務経理に携わっていますが(私が政府の経理部長だとして)日銀を連結子会社から外す勇気はありません。粉飾決算と言われます。

さて、連結決算から考えると、政府が発行した国債を(子会社である)日銀は保有すると、国債(政府は債務、日銀は債権)は連結消去されて消え去ります。残るのは、国債見合いで政府が購入した何らかの資産、そして負債としての日銀当座預金です。

「国債が日銀当座預金に変わっただけではないか」、と変な主張をする人がいますが、大違いです。日銀当座預金は(原則)金利がつきません。そうなのです。国債を逓増させてしますあの厄介者、あの金利が消え去るのです。

「でも日銀当座預金が増え続けるではないか」と問題視する人がいますが、預金はお金です。お金が増え続けて何か問題でも、というのがシンプルな答えです。

ただ、財務省や日銀にとっては、彼らが単体で管理するバランスシートの問題があるでしょう。問題というか、無限に増え続けて良いのか、という気持ち悪さの問題です。

この「気持ち悪さの問題」までも踏まえた解決方法を、参政党の松田学氏が提案してくれています。ぜひ、松田氏のyou tube番組を一度見てください。とても参考になります。

 

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