
【マンキューの十大原理】
人々はどのように意思決定するか
1.人々はトレードオフに直面している
2.あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
3.合理的な人々は限界原理に基づいて考える
4.人々は様々なインセンティブに反応する
人々はどのように影響し合うのか
5.交易(取引)は全ての人をより豊かにする
6.通常、市場は経済活動を組織する良策である
7.政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
経済はどのようにして動いているか
8.一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
9.政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
10.社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している
十大原理の8~10「経済はどのようにして動いているか」、今回は10について説明します。
これにて10大原理の説明は終了です。
インフレと失業のトレードオフ
「インフレと失業のトレードオフ」とは、要は;
- 失業(率)が減少すると、ある時点から物価上昇(インフレ)が顕著になる
- インフレ(率)が低くなると、ある時点から失業(率)の上昇が始まる
インフレとは、国の総供給に対して総需要が上回ることによって生じる「値上げ」ですから、インフレの状態の時とは基本、消費者にお金が回っている(景気の良い)状況です。作れば売れる訳ですから、財・サービスの一層の提供のため、人手に対する需要が高まり、失業率は低下します。結果、消費者全体の購買力は益々高まり、モノの値段は更にあがります。つまりインフレが高まるのです。
インフレ率が低下している状況は、上の逆です。財・サービスは売れず、人手への需要が低下します。雇用されていた人々は解雇となり(まずは非正規雇用から)、失業率は高まります。
ここで繰り返しますが、インフレとは基本、消費者にお金が回っている状況、つまり好景気の経済の特徴であるということです。失業率の低下から、労働需要が高く、通常の国民にとっては賃金の上昇が実現される社会なのです。
ところが日本では、インフレをとかくネガティブに捉える風潮があります。その風潮を操る二大勢力を、以下暴露します。
インフレを嫌う二つの勢力
日本銀行~無責任な官僚体質
一つは日本銀行です。確かに黒田総裁以降、政治主導で改善はしましたが、根っこにあるのは「無責任な官僚体質」です。
「日銀理論」というものがあります。何かと言いますと、「中央銀行はインフレをコントロールできない」というトンデモ理論です。
中央銀行は民間の資金需要に対して「受動的に」マネーを供給しているにすぎない、インフレ/デフレは日銀の責任ではない、と言いたいのです。
今では当たり前になった「インフレ目標政策」導入に、先進国で最後まで抵抗したのは日銀とその一派です。
アベノミクス初期、いわゆる「黒田バズーカ砲」出動と同時に(やっと)インフレ目標政策が導入された際、識者と言われる方々(特に金融系のエコノミストの多く)が「インフレを制御できなくなる」「人為的なインフレは危険」「ハイパーインフレになる」と轟轟と非難したことを私は覚えています。この、完全に予測を外した面々は、今でも「識者」として官庁・経済界で重用されています。
官庁にとっては、自分たちの責任を免責してくれる便利な輩なのでしょう。
しかし経済界も重用するとは。。。我が国の経済界トップの「経済音痴ぶり」がこれで解ります。
FRB 信頼できる世界経済の最後の砦
日本とは対照的にアメリカのFRBは果敢に責任を果たします。リーマンショック後のバーナンキ、続くイエレンと、本当に頼もしい人材が経済を支えることがアメリカの強みです。
そしてアメリカの強みは、最新の経済理論に基づいて政策が行われることにあります。バーナンキはデフレが続く日本を徹底研究し反面教師としています。イエレンは長期停滞論をかみ砕き、明示こそはしませんが、MMT的な考え方も採用していると思います。
一方我が国は、「にちぎんりろーん」に取りつかれた、保身と世渡りだけの経済官僚が無責任に、だらだらと、世界の最新潮流と無関係な政策を続けています。
そして、その官僚たちの好き放題を許しているのが、国民の無知です。
経済界~無知とブラックの巣窟
日銀につぐ二つ目の勢力、それは何と経済界です。好況を望む筈の経済界がインフレを嫌うとは、我が国の病巣は深いと言わざるを得ません。
なぜ経済界が。。。と思われるでしょうが、それは一つに無知だからです。或いは、トップが高齢者ばかりですので、まだ「高度成長期の記憶」から抜け出ていません。また、大学で勉強をしていない世代ですので、経済学の最新潮流などに知的関心を寄せることもありません。
また、彼らは高級官僚と仲良しです。企業に雇い入れ、また無防備に官僚の提言をサポートしようとします。高級官僚にNo!という気概など、今の経済界トップには望めません。
経済界がインフレを嫌う(デフレを好む)二つの理由は、人件費を安く維持したいからです。労働者に対する支配力を強めたいという意図もあるでしょう。ブラック企業が典型ですよね。他に働き口の少ない労働者は、企業の無理難題を飲むしかないのです。
デフレ放置では日本経済は縮小するばかり、経済界にとっても困るのでは?
もっともな質問です。しかし、経済界上層部にとって日本経済はもはや関心外なのです。彼らの関心は、お隣にある大きな国、すなわち中国です。人権問題? どなたかが明言してましたが「経済とは別の話(彼らの関心外)」。
安い日本の労働者を使い倒して、中国市場で儲けることが彼らの戦略です。そのためにも、日本の労働者の賃金が上がっては困るのです。これが経済界(上層部)の考えだと思います。
そして、労働者の賃金が安いのはデフレが理由ではない、労働者の能力が低いので(最近は生産性という言葉をやたら使いますね)給料が安いとすり替えます。
「にちぎんりろーん」とそっくりですね。全て民間のせい。「ゾンビ企業は潰せ」と言っている、政府に擦り寄っている経済学者とも相似です。彼らは本当は「ゾンビ労働者」と言いたいのですよ。それではあまりに露骨なので「企業」と言いているだけです。
コロナ禍でも「緊急事態」を全て人流に押し付けて(民間が自粛しないから悪い)問題の根源にある「医療体制」(民間医療機関が殆ど活用できていない)についてはダンマリですよね。官僚と医師会が「お友達」だからです。飲食・宿泊業の方々は本当にお気の毒です。
しかしこのような官僚を許しているのは国民が無知だからです。私は投票を棄権したことは無いですが、若いころ「投票するの!真面目~(暗い)」と言われたものです。
この風潮を「誰が操作してきたか」に気づき、まともな政治を取り戻す必要があります。時間はもう残されていません。微力ながら発信を続けていきます。