経済学の十大原理 8
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【マンキューの十大原理】

人々はどのように意思決定するか

 1.人々はトレードオフに直面している

 2.あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である

 3.合理的な人々は限界原理に基づいて考える

 4.人々は様々なインセンティブに反応する

人々はどのように影響し合うのか

 5.交易(取引)は全ての人をより豊かにする

 6.通常、市場は経済活動を組織する良策である

 7.政府が市場のもたらす成果を改善できることもある

経済はどのようにして動いているか

 8.一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している

  9.政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する

  10.社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

十大原理の8~10「経済はどのようにして動いているか」、今回は9について説明します。

政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する

物価とは、お金(紙幣)と商品・サービス「全体」との交換比率ですので、お金が増えればその交換比率の値(物価)が上昇するのは、定義上自明なことです。

尚、物価に関連する言葉として、インフレーション=継続的に物価があがること、デフレーション=インフレの逆、を覚えてください。

さて「お金を増やしたってインフレにならないよ。今の日本の状況を見てごらん。」とか、「中国から安い商品が輸入されていることがデフレの原因」「人口が減少している日本ではインフレにならない」など、お金の量と物価は関係ない、と主張する言説が日本では絶えません

お金が増えればその交換比率の値(物価)が上昇するのは定義上自明、なのになぜこんな言説が流行るのでしょう?

こういったトンデモ言説が出てくるのは、「お金」についての理解の混乱と、一国の需給ギャップというマクロ経済に対する理解不足、が原因です。

以下解説していきましょう。

物価に影響する「お金」って何?

「お金」って簡単に言うけれど、十分に理解している人は本当に少ないと思います。

硬貨(コイン)はまだしも、紙幣(紙のお金)について多くの人は、金銀財宝が背景にあって、その価値を反映して発行(刷られている)と、ぼんやりと思っているのではないでしょうか。

全く違います。昔は「金本位制」といって、紙幣を刷る背景に一定の金の確保が必要でした(紙幣を多く刷るには、その分金を集めてこなくてはいけない)。

今はそのような縛りはありません。刷るどころか、コンピューターに打ち込むだけです。1,000,000,000,000・・・とキーボードを叩くのです!

この辺の詳細については以下の投稿を参考にしてください。

お金はデータであることは理解いただけましたね。ではそのデータを打ち込むのは誰でしょう?もちろん日本銀行です。日銀は(自らの監督下にある)民間銀行の預金にデータを放り込むのです。この、日本銀行が放出する(ばら撒く)民間銀行宛のお金をマネタリー・ベースと呼びます。このお金は民間銀行の預金(日銀当座預金といいます)に留まっていることに注意してください。異次元緩和とは、マネタリー・ベースの爆発的増大のことです。

マネタリー・ベースは銀行が日銀に預ける預金であって、民間で実際に流通するお金とは異なります。つまり、マネタリー・ベースは(直接に)物価に影響するお金ではないのです。

では「物価に影響するお金」とは何でしょうか?それはマネー・ストックと呼ばれ、金融部門を除く民間部門で保有されるお金のことです。つまり、実際に経済活動に使われるお金といってよいでしょう。

日本の現状は、マネタリー・ベースはジャブジャブですが、マネー・ストックの伸びは非常に低いです。物価が上がる状態にないのです。

黒田日銀も、初期はマネタリー・ベースを増やすことでマネー・ストックを伸ばすことに成功していましたが、消費増税などで腰砕けになったのが現状です。

この二つの区別がつかない人が「異次元緩和でお金を増やしたって物価は上がらない」としたり顔で妄言をはくのです。物価は上がりません。だってマネー・ストックは伸びていないのだから。

マネタリー・ベース、マネー・ストックの詳細については、以下の投稿を参考にしてください。

尚、マンキューの「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」との表現は、確かに誤解を招きやすいですね。経済学者の多くは、金融の実務に明るくないのか、この分野の説明は舌足らずな感じがします。この点については話題のMMT(現代貨幣理論)に軍配が上がります。

需給ギャップ~ どれだけ作れるか vs どれだけ買えるか

物価はお金と実物経済の交換比率、といえましょう。

ここで「お金」とは世の中に出回っているお金、マネー・ストックのことであること、上で説明しました。

それでは「実物経済」を見るうえで、何がポイントとなるのでしょう?

それは「需給ギャップ」です。需給ギャップとは、一国経済として、財・サービスの供給能力と、それらを消費する総需要(購買力)の差です。

一国内では生産能力以上に消費することはできませんので、通常需給ギャップは 生産能力>購買力 となります。国民に購買力があり(要するに豊かで)生産能力のぎりぎりまで消費活動が行われるのが理想です。残念ながら日本は、国民に購買力がなく(貧乏で)生産能力が余っているのが実態です。需給ギャップがマイナスであり、デフレ・ギャップともいわれます。日本はこのデフレ・ギャップを30年近く放置している酷い国です。また、国民が不満を言わない、極めて奇妙な国です。

「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」のは、デフレ・ギャップが存在しないことが前提です。デフレ・ギャップの状況では、需要が増えたとしても生産余力があるので、値段を上げずに財・サービスを提供することが可能であるからです。

デフレ・ギャップとは、未使用の人的物的資源が放置されている「もったいない」状況です。国民の購買力があがり、未使用の資源が使い果たされて、初めて物価の上昇と結びつくのです。

「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」ための条件

マンキューの十大原理の内、この第九原理は条件付きで成立する珍しい原理です。その条件とはここで説明した通り;

  •  紙幣を印刷し過ぎて「マネーストック」が伸びること(マネタリー・ベースではない)
  • 経済に「デフレ・ギャップ」が存在すること

日本はこれら条件が満たされませんので「刷り過ぎても」物価は上昇しません。マンキューさんの原理は当てはまらないのです。

あのマンキュー教授も困惑しているのではないでしょうか。

まさかこの世の中に30年もデフレを放置する国が存在するなんて想像もできなかったって。

いえいえ、日本という異常国家がちゃんと存在するのです。。。

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