経済学の十大原理 7
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【マンキューの十大原理】

人々はどのように意思決定するか

 1.人々はトレードオフに直面している

 2.あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である

 3.合理的な人々は限界原理に基づいて考える

 4.人々は様々なインセンティブに反応する

人々はどのように影響し合うのか

 5.交易(取引)は全ての人をより豊かにする

 6.通常、市場は経済活動を組織する良策である

 7.政府が市場のもたらす成果を改善できることもある

経済はどのようにして動いているか

 8.一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している

  9.政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する

  10.社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

 

十大原理の8~10「経済はどのようにして動いているか」、今回は8について説明します。

一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している

第8原理では「ほぼ自明なこと」が述べられています。「生活水準」とは個人が消費できる財・サービスの量のことなので(*)、それが「財・サービスの生産能力に依存する」とはトートロジー(同義反復)に近い表現です。

(*)もちろん財・サービスの「質(クオリティ)」も生活「レベル」に重要な要素ですが、経済学ではまず「量」を重視します。何故ならば、ある一定の生活水準を達成するには、消費できる財・サービスの「量が満たされる」ことが「必要条件」であるからです。子供に十分に与える食料がない国の生活水準が高いとは絶対に言えませんよね。まず量を満足して(絶対の必要条件)、次に質なのです。この辺を整理せずに、やたら「質」を強調する論者がいますが、彼らの多くは無責任な脱成長主義者です。

トートロジーに近いながらもこの原理が重要なのは、次の質問に明確な回答ができるからです。

  • なぜアフリカの国の人は飢えているの、日本とは何が違うの?
  • 江戸時代には何度か飢饉が発生しているけど、現代日本と何が違うの?

子供にこう聞かれたら答えは簡単です。

  • 今の日本は食べ物を作るちからが(アフリカ、江戸時代の日本と比較して)とっても強いんだよ。また、自動車など機械を作るちからも強くって、それを交換して外国から食べ物をたくさん買えるんだ。

答えの基本は「作るちから」ですね。「生産能力」を子供向けに言い換えただけです。

生産能力は何で決まるか

ある国が生産物をどれだけ供給できるかは、機械(設備)と人、そして技術に依存します。

第二次大戦で敗戦した日本は、その後著しい高度成長期(≒生産能力の増強)を迎えますが、その時は農村部から都市部へ大量の人口が移動しました。彼らの多くは工場で働き、機械と共に大量の製品を生産することが可能になりました。農村では(もちろんトラクターなどありますが)機械が生産に寄与する割合は低いです。その農村から大量に工場へ人が移り、今度は機械を使って生産するのだから、どれだけ(一国として)生産能力が上がったか、容易に想像できると思います。

高度成長期の機械化、すなわち工場などへの投資が盛んになったのは、朝鮮戦争など様々な幸運が重なった結果の様です。機械化の「最初の一撃」が幸運にも進んだことで、日本は生活水準向上の坂道を駆け上ることができたのでした。

一旦機械化が進めば、技術の進展は競争原理で自動的に進んでいきます。技術の進展というと、何か革命的な変化をついイメージしがちですが、実際は生産能力を5%上げるとか、非常に地道な努力の積み上げです。

工場等への機械設備への投資、そこへの人手の投入、そして地道な技術革新が生産能力向上の基礎です。日本はこうやって「つくるちから」を高めてきたのです。

「生産性」、この誤解の塊り

日本の高度成長を促した「最初の一撃」は「幸運が重なって」生じた、と説明しましたが、もう少し理由を知りたいと思ったのではないでしょうか。しかしこのトピックスを話せば非常に長くなるので、別の機会に回したいと思います。

今回は、「生産能力」から派生して、最近よく耳にする話題「生産性」について、説明したいと思います。

よく「日本人の生産性は低い」「中小企業の生産性が低いことが日本の低成長の原因」などと言う人がいます。しかしとても感覚的な言葉で、生産性の意味を理解した発言とは思えません。

またここで言われる「生産性」は「労働生産性」のことと思われるので、要は「日本人の働き方はだめだ」といいたいのでしょう。

さて、労働生産性とは、付加価値(粗利、日常語では儲け)を、その付加価値を得るために投入した労働量(時間)で割ることで得られます。

労働生産性=粗利÷総労働時間
粗利=売上 x  収益性

この定義から明らかなように、労働生産性はそもそも粗利が増えないと向上しないのです。そして粗利=売上 x 収益性 ですので、売上が増加することが大前提となるのです。

こう考えると、政府の無策によって30年もデフレ脱却から脱出できない日本企業、とくに内需が中心の中小企業の生産性が向上する訳がないのです。

日本企業、特に中小企業は、逆回転しているベルトコンベアーに乗って走らされているようなものです。それでいて「走るの遅い」と揶揄される。。。虐めです。

しかしながら、政府・官僚は「日本人の働き方が悪い」と強調します。何故でしょう?それは自分たちの失敗を認めたくないから、責任を取りたくないからです。

コロナへの対応と全く同じですね。効果が不明な「緊急事態宣言」ばかりに頼る。。。「緊急事態」は日本の医療体制の不備によるものなのに、いっこうにそれを変えようとしない。そして国民が活動するから悪いのだ、といった態度で挑む知事たち。酷いものです。

しかしもう一つの問題は、地上波、モーニングショーの影響か、国民が自ら操られることです。「マスク警察」とか「夜回り隊」とか。。。「欲しがりません、勝つまでは」の戦時下と同じです。背筋が寒くなります。

幸い、ネットの普及によって、マスメディア以外での発信も影響を持つようになりました。「騙されないために」私も微力ながら発信を続けます。

 

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